ツケは米自身に、トランプ氏の恫喝政策に危うさ 2017/1/7 本日 の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「ツケは米自身に、トランプ氏の恫喝政策に危うさ」です。





 円安・株高は七難隠す。経済団体の5日の新春祝賀会では企業トップの弾んだあいさつが行き交った。その矢先にトランプ米次期大統領が送った「NO WAY(あり得ない)!」の5文字が日本と世界をかき回した。

トランプ氏は「米国に工場を建てるか、高い関税を払え」とツイッターに投稿した

 ツイッター投稿の半日前、榊原定征経団連会長は3団体の共同記者会見で米の「産業促進的な政策」への期待を繰り返し語った。「トランプ効果は2年続く」と威勢の良い首脳発言も。そんな楽観論に冷や水をかける、とんだ新年の贈り物だ。

 発言はメキシコ新工場の建設をやめないと話す豊田章男トヨタ自動車社長への意趣返しともみられている。日本企業と世界の自動車産業の代表格であるトヨタは「米国第一主義」を訴える露払いには格好の標的と映ったはずだ。

 これは介入というよりも、企業への妨害と呼ぶべきだ。積極財政と規制緩和の「良いトランプ」から、強引な脅しで企業を変心させる「悪いトランプ」へ。最大市場の米国とどう向き合うか、日本の企業も政府も厳しい現実に直面する。

 半面、今回の混乱劇には冷静な観察も必要だ。就任もしていないトランプ氏。与党の共和党幹部からも強烈な批判が出ている。

 自分の思うがままに個別企業の戦略を動かし、米国に投資させる。大統領にとって強権の醍醐味は十分かもしれない。だが、それが本当に米国自身のためになるのかは疑わしい。

 米国がメキシコから輸入する完成車は年間約200万台。自動車部品の輸入額の3割がメキシコ製だ。2国間の自由貿易を止めたり、強引に生産拠点をコストの高い自国に移させたりすれば、ツケは高い車を買わされる米国の消費者がかぶる。

 世界の企業はトランプ氏の奔放な発言に「予見不可能な米国」を意識し始めた。縁故主義の高まりへの懸念も拭いきれない。それは米国への投資を鈍らせる。欧州連合(EU)離脱を控えた英国への視線と一緒だ。

 当選したトランプ氏と真っ先に会った安倍晋三首相は遠からず首脳会談に臨む。自由貿易を堅持する決意をきちんと伝えられるかどうか、世界が注目する。日本企業もトランプ氏の一言一句に右往左往することなく、いまこそ冷静かつ冷徹な対米戦略を練っておくべきだ。

(編集委員 菅野幹雄)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です