トランプの米国 身構える世界(2) 「法の番人」なき危 うさ 編集委員 秋田浩之 2017/1/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「トランプの米国 身構える世界(2) 「法の番人」なき危うさ 編集委員 秋田浩之」です。





 ビジネスのような損得勘定で外交を動かし、世界を混乱させかねない。トランプ氏にはこんな不安がついて回る。

 だが、外交の取引を好んだ大統領はこれまでもいた。むしろ最大の危険は、世界の平和や自由を支えようという使命感が、彼にないことだ。

 当選直後、トランプ氏はオバマ大統領とホワイトハウスで会い、90分間、引きつぎを受けた。

 内容を知る米外交専門家によると、オバマ氏が最も切迫した脅威にあげたのが、北朝鮮だった。北朝鮮の核やミサイル開発にすぐに対処しないと、大変なことになる。オバマ氏は自戒を込め、こう力説したという。

 ところがトランプ氏は北朝鮮問題は「中国に解決させる」と、丸投げの態度を変えていない。

 世界は戦後、米国が警察役を果たし、なんとか安定を保ってきた。オバマ前大統領は「もう世界の警察はやらない」と公言しながらも、クリミアを併合したロシアや、北朝鮮への制裁を主導した。国際法に基づいて秩序を守らせる「法の番人」の役目は、果たそうとしてきたのである。

 トランプ氏にはそんな意識すらない。米軍増強は自国を安全にするためであり、世界の平和を守るためではないだろう。

 とりわけ気がかりなのが、中国への対応だ。最近、トランプ政権の閣僚候補に会った米国防総省ブレーンはこう打ち明けられ、驚いたという。

 「通商や通貨問題で中国を押しまくっていく。その際、(台湾や北朝鮮といった)安全保障問題を駆け引きに使うかどうか、政権チーム内で真剣な議論が続いている」

 トランプ氏は台湾や南シナ海問題で、中国に極めて強硬な態度をとっている。だが、通商・通貨問題で中国が言うことを聞くなら、安全保障問題では多少、譲ってもいいという発想におちいらないか、心配だ。

 トランプ氏はロシアにも秋波を送る。欧州からも「自分たちの安全保障が置き去りにされる」(フランス政府関係者)といった声が聞かれる。

 では、アジアや欧州はどうすればよいのか。まず大切なのが、米閣僚らとの連携だ。候補には世界情勢への造詣が深い人たちもいる。

 例えば、国防長官に選ばれたマティス元中央軍司令官について、元同僚は「自分が知るなかで、いちばん知性的な戦略家」と語る。彼は議会公聴会で、同盟国と結束し、中ロの強硬な行動に対抗する考えを強調した。

 とはいえ大統領の権限は絶大だ。米国第一主義に歯止めをかけるには、トランプ氏とも関係を築かなければならない。

 2009年、日本では政権交代で生まれた鳩山内閣が、米軍基地問題などで迷走した。それでもオバマ政権は辛抱強く向き合い、同盟が壊れるのを防いだ。いま日本や欧州に求められているのは、同じような行動だ。



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