トランプの米国 身構える世界(1) 我流の変革、高まる緊張 トランプ大統領就任 ワシントン支局長 小竹洋之 2017/1/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「トランプの米国 身構える世界(1) 我流の変革、高まる緊張 トランプ大統領就任 ワシントン支局長 小竹洋之」です。





 トランプ氏は昨年末、米フロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」で大統領就任演説を練り始めた。「レーガン、ニクソン、ケネディ」。その際に挙げたのが3人の先人の名前だったという。

 なかでもレーガン元大統領への思いは強かった。深刻な不況とソ連の脅威で自信を喪失した国民を鼓舞し、経済・軍事の両面で「強い米国」を目指した革命児に共感しているのは確かだ。

 「偉大な米国の復活」。トランプ氏はレーガン氏の看板にならい、内憂外患にあえぐ超大国の再生を公約した。だが、あまりに過激で内向きの変革を志向する異端児を前に、世界の緊張はいや応なしに高まる。

 トランプ氏の経済政策を過小評価することはできない。大胆な減税やインフラ投資、規制緩和を好感した株式市場。米著名投資家のジョージ・ソロス氏はその風向きを読み違え、10億ドル近い損失を出したそうだ。

 「トランプ氏が米経済のムードを劇的に変え、長期停滞からの脱却を可能にするかもしれない」と英歴史家のニーアル・ファーガソン氏は言う。それは2億人近くの失業者を抱え込む世界にとっても朗報だろう。

 しかし、トランプ氏が「米国第一主義」を貫徹し、本気でグローバル化に背を向けるのなら、その打撃は計り知れない。中国との貿易・通貨戦争やメキシコ移民の排斥などは、米経済の成長を妨げるだけでなく、世界経済全体を縮小均衡に追い込む恐れもある。

 年間2億人以上の移民が国境を越えるのが今の世界だ。1日あたりの製品の貿易額は1千億ドル弱で、外国為替の取引額はその50倍以上に達する。そんな時代に国を閉じ、ヒト・モノ・カネの流れを制御できるのか。自身の裁量で企業の活動や為替相場を誘導するトランプ氏が、市場に代わって資源の最適配分を実現できるとも思えない。

 「理念」よりも「実利」、そして「国際協調主義」よりも「単独行動主義」――。トランプ氏の特質は米国の外交・安全保障政策にもパラダイムシフトをもたらす。

 日本や欧州には米軍の防衛コストをもっと負担するよう求める。中国から貿易・通貨問題の譲歩を引き出すためには、中国大陸と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」政策も取引材料に使う。米ブルッキングス研究所のトーマス・ライト氏は「すべてを経済のレンズで見ようとするのは問題だ」と話す。

 戦後の米国は孤立主義と決別し、自由経済や民主主義の守護者として世界の繁栄と安定に貢献してきた。たった1人の指導者の出方次第で、超大国と国際秩序の変質が深刻になりかねない。

 米国際政治学者のイアン・ブレマー氏は「戦後で最も不安定な政治環境」に世界は投げ込まれるとみる。我流の変革はそれほどの危険をはらむ。



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