トランプショック 世界の行方を聞く 大衆迎合の芽、世界 に 英王立国際問題研究所所長 ロビン・ニブレット氏 2016/12/4 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「トランプショック 世界の行方を聞く 大衆迎合の芽、世界に 英王立国際問題研究所所長 ロビン・ニブレット氏」です。





 ――トランプ次期米大統領は世界の民主主義体制にどのような影響を与えるでしょうか。

 「1945年以降、世界の秩序は統合的で、自由貿易を志向してきた。何よりも米国が第2次世界大戦で勝ち、その下で各国が経済や社会福祉制度の再建に注力できたことが大きい。それが米国の利益でもあった。冷戦を経ながらも、欧州連合(EU)の誕生、中国の世界貿易機関(WTO)加盟などに象徴されるように、自由主義経済が拡張するのが前提だった」

 「その米国で戦後初めて、こうした価値観に疑問を投げ掛けるリーダーが誕生した。すでにトランプ氏が環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を表明したように、自由主義経済の拡張を前提とする戦後秩序は転換点を迎えた。自由貿易を志向する諸国にとり当面は拡大ではなく、現状維持が最大の挑戦になる」

政治空白を突く

 ――英国もEU離脱を決めました。なぜ欧米で保護主義やポピュリズム(大衆迎合主義)の動きが広がるのでしょうか。

 「先進国の労働者層を中心に、グローバル化の恩恵は期待ほど大きくはなかったとの認識が広がっている。新興国の台頭で先進国の競争力は潜在的に低下。好景気が覆い隠したこの事実を金融危機があぶり出した。先進国の政治は中道主義を掲げたが、人々の不満の受け皿になれず、イラク戦争などをきっかけに既存政治への不信は深まった。ポピュリストたちはこの政治空白に浸透し『昔はもっと安定していた』とささやいている」

 「しかしこれは欧米だけの問題にとどまらないだろう。テクノロジーの発展が雇用を奪うという不安や格差拡大などの問題は新興国でも同じだ。トルコのエルドアン大統領ら強権的なリーダーは増えている」

 ――ポピュリズムの波にどのように対処すべきでしょうか。

 「政治家が国内の圧力に正面から向き合い、国民が経済回復を実感できるようにするしかない。先進国では古いシステムが温存され、疲弊している。例えば英国では、社会福祉や公教育の現場の改善が何十年間も放置され、人々の政治不信につながった。これは中国やEUの台頭とは関係のない純粋な国内問題だ」

地政学リスクも

 ――トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)の役割を疑問視する発言を繰り返しています。欧州の安全保障にどのように影響しますか。

 「トランプ政権の誕生がロシアを利するとの見方もあるが、判断するのは時期尚早だ。米国の中枢は対ロシアの前線としてのウクライナやバルト諸国の重要性とNATOの実行力を十分理解しているはずだからだ。もっともモルドバで親ロシアの大統領が誕生するなど、ロシアは周辺国への影響力を強めている。米中ロを中心とした地政学リスクが戻りつつある」

(聞き手はロンドン=小滝麻理子)

=随時掲載

 米戦略国際問題研究所(CSIS)を経て英王立国際問題研究所入り。専門は英米の外交政策、米欧関係など。英オックスフォード大で博士号取得。55歳。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です