ドル高是正譲れぬ米 G20の裏で「新プラザ合意」構想 通貨 協定、ターゲットは中国 2017/4/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「ドル高是正譲れぬ米 G20の裏で「新プラザ合意」構想 通貨協定、ターゲットは中国」です。





 【ワシントン=河浪武史、上杉素直】21日(日本時間22日)閉幕した日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、為替について従来の原則を確認するにとどめ、深入りを避けた。だがトランプ米大統領の本音はドル高是正だ。G20は7月にドイツで首脳会議を開くが、通貨政策を巡る日米中欧の駆け引きは水面下でさらに激しくなっている。

 「為替相場で盛り上がったということはなかった」。21日、財務省同行筋は無風の会議だったと説明した。直前にトランプ米大統領が「ドルは強くなりすぎている」と発言し為替が争点に浮上したが、トランプ氏の腹心であるムニューシン財務長官は各国財務相らに「長期的には強いドルが重要だ」と述べるなど火消しに動いた。

 巨額の連邦債務を抱える米国にとり、ドル安は資本調達難に陥る危うい道。米財務省は伝統的スローガンともいえる「強いドル路線の維持」をトランプ政権に訴えるが、足元のドル相場は14年ぶりという高値圏だ。米輸出産業や物価などへの影響を考慮すると、本音ではこれ以上のドル高は回避したいのは明らかだ。

 G20会議が開幕した20日。ワシントンの財務省に近いビルに共和党関係者や経済学者ら100人弱が集った。狙いはドル高是正で主要国が結束した1985年の「プラザ合意」の再現だ。プラザ合意の立役者であるボルカー米連邦準備理事会(FRB)元議長とベーカー元財務長官がそろってビデオ講演。ドルとユーロを固定相場にする過激論を掲げるノーベル経済学者、ロバート・マンデル氏も加わり、金本位制の復活まで議題に上がった。

 主役の一人だったのは政権移行チームでトランプ氏に通貨・金融政策を入れ知恵したエコノミストのジュディ・シェルトン氏だ。同氏は「トランプ政権には相場安定を目指して主要国間で新しい通貨協定を結ぶアイデアがある」と明かす。本格的な為替調整に向けた「第2プラザ合意」ともいえる舞台構想。それを荒唐無稽と一蹴できないのがワシントンの空気だ。

 通貨協定構想で手を組む第一のターゲットは中国だ。ドル高是正は人民元安に悩む中国にも一段の資本流出を阻止する手段になる。北朝鮮問題で協力関係を探る米中だが、トランプ政権は通貨政策でも中国とは利害を一致させられるとみる。

 20日にワシントン入りした周小川・中国人民銀総裁は、ホワイトハウスで頭角を現すコーン国家経済会議(NEC)委員長と人知れず会談した。7月にG20はトランプ氏や習近平・中国国家主席を交えて首脳会議を開くが、米中がドル高是正で合意するような事態になれば日本は打つ手を失い、追い込まれる。

 米財務省が先に公表した為替報告書には通貨マフィアが気をもむ文言が紛れ込んだ。「永続的な為替相場のズレ(misalignments)を回避しなければ、自由で公正な貿易は広がらない」。「為替のズレ」はロス商務長官ら米政権有力者が一斉に使い始めたもの。他国による一時的な為替操作の影響などではなく、14年ぶりのドル高という相場水準そのものがいわば“市場の失敗”だと断じる論法だ。「為替のズレ」は1980年代のドル高時にも使われ、その後のプラザ合意の布石となったとされる。

 G20会議議長のショイブレ独財務相は21日、世界のデフレ懸念が和らいだとみて「我々は金融政策の正常化に向け準備すべきだ」と語気を強めた。ドル高是正を急ぐトランプ政権はFRBが利上げで突出するのを懸念しており、ドイツが過度な金融緩和を嫌って利上げ圧力を強めるのは内心歓迎するという構図だ。

 トランプ政権が本気でドル高是正に乗り出せば為替・金融市場は再び大混乱に陥る恐れがある。国際通貨体制が新たな不安の時代に入りつつある今、円安と金融緩和で生き永らえてきた「アベノミクス」もその波間で翻弄されるリスクが高まっている。



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