ネット中傷、歯止めかからず 2018/05/08 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「ネット中傷、歯止めかからず」です。





スマートフォンの普及でだれもがインターネットに情報を発信できるようになり、掲示板や交流サイト(SNS)での誹謗(ひぼう)中傷など悪質な書き込みトラブルが後を絶たない。裁判所への書き込み削除などの訴えが増えているが、最近は中傷の手口も巧妙化し、司法の判断も慎重になっている。書き込まれた側が泣き寝入りしないためには証拠集めなど早期に手を打っていくことが大切だ。

2017年6月に起きた東名高速道路での危険運転事故。事故後に容疑者が住む県内の企業について、社長が容疑者の父とする事実無根の書き込みがあった。会社には中傷や脅迫めいた電話が続き、警察がネットに情報を流したとされる複数の人物の関係先を家宅捜索する事態に発展した。

ネット社会が急拡大した02年に施行されたプロバイダー責任制限法では名誉毀損などの書き込みがあった場合、インターネットの接続業者(プロバイダー)などに書き込みの削除や発信者情報の開示を求められると定めている。ただこうした枠組みがあっても、被害に歯止めはかかっていない。

「感想だ」と言い訳

法務省によると、17年に新たに認知されたネット上の人権侵害件数は前の年に比べて16%増の2217件と、5年連続で過去最高を記録した。そのうち名誉毀損とプライバシー侵害の書き込みが85%を占めた。

最近は中傷を書き込む側の巧妙な手口が増えているようだ。ネットの書き込みトラブルに詳しい神田知宏弁護士は「あとで問題になっても『個人的な感想を書いただけだ』と言い訳できるような書き方をしているケースが多い」と指摘する。

書き込みの削除を巡る司法の判断が慎重になってきたとの指摘も多い。弁護士からは「以前なら認められていた削除請求が通らなくなったケースが増えている」との声が上がる。憲法の保障する「表現の自由」とのバランスから、論評や意見表明と受け取られる場合などは削除を認めない傾向が強まっている。

18年1月には東京地裁が都内のネット関連会社の削除要請を棄却する判決を出した。同社は自社名を検索すると「詐欺」などと表示され名誉が傷つけられたとして、米グーグルに削除を求めていた。判決は「真実でないと認める証拠はない」としたうえで「検索結果を提供する表現行為は私人の名誉権に優先する」などと指摘した。

とにかく早く動く

だが泣き寝入りは禁物だ。専門家によると、書き込みに気付いたらできるだけ早く動くほど被害回復への道が開ける。書き込まれたページの保存など十分な証拠を集めることもできる。そのうえで掲示板やSNSの管理者に削除を依頼する。依頼フォームや事業者団体がつくる標準ガイドラインに沿った手続きをすれば、「国内の大手であれば対応が取られる場合が多い」(中沢佑一弁護士)という。

削除してもらえないときはサイトの管理者などを相手取り、裁判所に仮処分を申し立てることが必要だ。訴えが認められると、書き込みの削除や投稿に使われたIPアドレス(ネット上の住所)の開示が命じられる。書き込んだ人を特定するには、これをもとにプロバイダーに対し、発信者情報の開示を求める手続きに進む。

プロバイダーへのアクセスの記録は保存期間が3~6カ月程度と短期間のケースが多い。とくにサイト管理者が海外企業の場合、書類の準備に時間もかかる。中沢弁護士は「書き込まれてから2カ月以内には専門家に相談してほしい」と助言する。

発信者が特定できた場合は損害賠償を請求できる。最近の中傷書き込みの慰謝料相場は50万~100万円程度。被害を受けた側の弁護士費用も負担させるケースが多いといわれる。

中傷を書かれた側はいいしれぬ恐怖や怒りを感じたり、社会的な信用を失ったりして多大な負担を強いられる。個人が権利の侵害に毅然と対応することがネットの健全化につながる。

(児玉小百合)



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