パナマ文書が問う(下) 減税競争、行き着く先は 進まぬ改革、企業見切り 2016/05/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「パナマ文書が問う(下) 減税競争、行き着く先は 進まぬ改革、企業見切り」です。





 米欧などの先進国で国家や政治が企業経営への批判を強めている。

頓挫した統合計画

 「我々は実際に富や仕事をつくりだしている。口だけの人間とは違う」。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のイメルト会長は4月、米有力紙に寄稿した。米国を代表する経営者に「口だけの人間」と批判されたのは、民主党のサンダース上院議員。米大統領選でクリントン前国務長官と党候補の指名を争い、民主社会主義者を自称する。

 同陣営がつくった「税逃れ10社リスト」はボーイングやファイザーなどと並んでGEを名指し。「2013年までの6年間に339億ドル(約3兆6000億円)超の利益を米国内で稼いだのに、法人税の実効税率はマイナス9%」と指摘した。サンダース氏は「米国の雇用を奪い、税金も払っていない」と批判した。

 4月上旬、米製薬大手のファイザーとアイルランド同業のアラガンは世界最大の製薬会社をつくる統合計画を白紙撤回した。「国に標的にされた」とアラガンの首脳。同社の本拠地で税率の低いアイルランドに本社を移す計画は、米政府の規制強化で阻止された。

 米ゴールドマン・サックスによると様々な節税策の効果で、米主要企業の15年の実効税率は29%と法定の約40%を下回った。税率40%を超えるカリフォルニア州に本社を置くアップルも15年は26%と低い。

法人税収の4年分

 米国の多国籍企業が海外に蓄えた2兆ドルは米法人税収入の約4年分。活動実態に見合った税金を母国に支払わず、節税策を駆使して海外に利益を蓄えている。こんな米国民の怒りはパナマ文書で増幅された。

 企業にも言い分はある。米国は法人税の実効税率が先進国で最も高い約40%。連邦法人税率を35%から28%にするオバマ大統領の公約は実現のメドが立たない。一方で利益の最大化を求める株主の圧力は強い。「時代遅れで複雑な税制のおかげで不利な競争環境にある」(イメルト氏)

 タックスヘイブン(租税回避地)は主に法人税の負担比率が20%未満の国・地域をさす。大手会計事務所によると、調査可能な146カ国・地域のうち15年は40弱あった。アイルランドはその一つ。法人税率は12.5%と欧州屈指の低さだ。15年の法人税収は前年比で5割近く増えた。

 米議会調査局によると法人・個人の課税逃れによって、米国が失う税金は1年で約1000億ドルに上る。オバマ政権も海外留保資金への課税強化など対抗策に躍起だ。しかし本来はどの国も法人税引き下げなどを通じて立地競争力を高めるのが王道で、改革が遅れれば国に見切りをつける企業は増える。安倍政権も16年度から法人実効税率を29%台に引き下げるが、経済界は満足していない。

 租税回避地の小国から超大国までが生き残りをかけた減税競争はどこまでいくのか。欧州連合(EU)では法人税の最低税率を域内で共通にする案も浮上。現実味は乏しいが、税逃れへの究極の一手ではある。国の徴税権に一定の歯止めをかけ、共通の税制に近づける。こんな姿を「夢想」と言い切れなくなったところに税逃れ問題の根深さがある。

 上杉素直、高見浩輔、黄田和宏、飛田臨太郎、河浪武史、川瀬智浄、植松正史、稲井創一が担当しました。



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