パンゲアの扉 つながる世界 覆る常識(3) 少数言 語の逆襲 画一より多様性に磁力 2018/4/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「パンゲアの扉 つながる世界 覆る常識(3) 少数言語の逆襲 画一より多様性に磁力」です。





 旧ソ連の人口1780万人の国、カザフスタン。2月、ラテン文字をもとに新たに開発した32文字を母国語に採用した。ロシア語と同じキリル文字を捨て去る。考案に携わったシャヤフメトフ言語開発研究所のトレショフ所長は「カザフ語を生き残らせながら世界とコミュニケーションしやすくする」と語る。

■カザフ語を再生

フェデラー選手のツイート画面。ファンとの交流にEmojiを活用する

 カザフ語の文字は歴史に翻弄されてきた。19世紀以降、アラビア文字やラテン文字を経て、旧ソ連編入後の1940年からキリル文字になった。カザフは91年に独立国家となったが、街中にはいまだロシアを象徴するキリル文字の看板があふれ人口の2~3割はカザフ語を理解しない。

 新しい文字の導入で帝政復活を夢見るロシアの影響力を遮断し、42もあるキリル文字では「スマートフォンでの入力が煩雑」(ナザルバエフ大学のオラザリエワ准教授)との不便を解消。デジタルの波に乗せてカザフ語を再生させる。

 パクス・ブリタニカ、パクス・アメリカーナを経て、20世紀に最大の国際共通語になった英語。だが人工知能(AI)を駆使して進化する自動翻訳機能によって「英語は絶頂期を過ぎた」との論も台頭。消えゆく運命とされてきた少数言語にはデジタルの世紀で逆襲の機会が生まれている。

 19~20世紀、植民地政策を進めた欧米列強は支配の象徴として言語とともに自国の文化を染み渡らせた。コカ・コーラ、ハンバーガー、ジーンズ。米国はハリウッド映画に乗せて大衆文化を売り込んだ。だが、もはや世界がつながる手段も文化も大国主導のトップダウンによる一方通行ではない。

 「音や文字とは違う新しい言語手段としてパラダイムシフトを起こした」。上智大学の木村護郎クリストフ教授がこう指摘するのは万国共通語になった絵文字だ。日本発祥ながら「Emoji」として世界に広まり無数に生み出されている。

 「Chief Emoji Officer」。仏石油大手トタルのプヤンネ最高経営責任者(CEO)の別称だ。ツイッターで発信する経営情報を絵文字をちりばめて説明する。スイスの人気プロテニスプレーヤー、フェデラー選手のある日のつぶやきは40以上の絵文字だけだった。

■常備食は中東発

 中東の伝統食が欧米の食卓を変えている。ひよこ豆をすり潰した「フムス」と呼ばれるペースト状の食品で英国の家庭の4割が冷蔵庫に常備。米国では消費増でひよこ豆の作付けが急激に伸びている。野菜に付けて食べるディップとして「持たざる国」の食文化が「持てる国」の健康志向の消費者をつかんでいる。

 米国のジャーナリスト、トーマス・フリードマン氏は1999年の著書「レクサスとオリーブの木」で、強者主導で均一化が進むグローバル化は地域に根付く独自のアイデンティティーとのバランスが必要と指摘した。

 だがグローバリゼーションの舞台にあがる国や人々の幅がどんどん広がっていく21世紀では、どこからでも世界に影響を与える力が生まれ、広く深く溶け込んでいく。画一を超えて多様に彩られる世界にこそ、一つにつながる強い磁力が宿る。



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