ビジネスTODAY 日本製紙「車に紙の部品」 石巻に量産工場 2017/4/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「ビジネスTODAY 日本製紙「車に紙の部品」 石巻に量産工場」です。





 日本製紙は25日、新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」の国内最大の量産プラントを石巻工場(宮城県石巻市)で稼働させた。紙と同じ原料からつくるCNFは軽く強度があり、「ポスト炭素繊維」の本命。国内製紙2強の日本製紙だが、電子媒体の普及などで主力の洋紙は需要減が深刻だ。業界自体が消えかねないとの危機感を背に新分野に挑む。

 「CNFを新たな事業の柱に育てる。今年は極めて重要な1年となる」。日本製紙の馬城文雄社長は25日、石巻工場で開いた式典で宣言した。プラントは16億円を投じ、印刷用紙などを手がける工場の一角に置いた。

 紙の原料でもある木材パルプを化学的に解きほぐし、高品質なCNFを年間500トンつくる。年内に静岡県と島根県の工場でもプラントの稼働を予定しており、CNF量産で先行する構えだ。

 CNFは幅4~100ナノ(ナノは10億分の1)メートル、長さ5マイクロメートル以上の極細素材。通常は水に溶かした液状で、ボールペンのインクの粘りを増す添加剤などとして実用化されている。繊維自体の重さは鉄の5分の1だが、強度は5倍あるとされる。

 「最終的には自動車用のプラスチックやゴムの補強材が目標だ」(馬城社長)。化粧品や塗料の添加剤などを手始めに、軽さと強さを生かして自動車の内外装部品に用途を広げる。「紙のクルマ」の実現が目指す姿だ。

 背景には、スマートフォン(スマホ)など電子機器の普及で増す「紙離れ」の深刻さがある。日本製紙連合会によると、2016年度の紙の国内出荷量は前年度比1.0%減の1371万トン。07年度のピーク時から約3割も減った。

 「10年後には製紙業界そのものがなくなりかねない」(同業他社の首脳)。王子ホールディングスに次ぐ国内2位の日本製紙は国内洋紙事業の比率が66%(15年度、販売量ベース)と高い。構造改革は待ったなしだ。

 お手本は炭素繊維で復活した繊維メーカー。代表例は東レだ。1960年代から研究を重ね、釣りざおやゴルフシャフトを経て、自動車・航空機部品に用途を広げた。炭素繊維事業は16年3月期の連結営業利益が361億円と全社の23%を稼ぐ屋台骨の一つとなった。

 とはいえ課題も多い。まずはコスト。現在は1キロ当たり数千~1万円だ。支援する経済産業省は「炭素繊維のように50年もかけられない」と30年ごろの普及を見込むが、その時点の想定価格は1キロ500円。かなりのコスト削減を迫られる。

 もう一つは早くも競争が激化していることだ。中越パルプ工業は25日、CNFの用途開発と販売で丸紅と提携すると発表。6月には鹿児島県で年産100トンのプラントを稼働させる。加藤明美社長は「3~5年で柱にしたい」と繰り返す。

 「本気でCNFを事業化するなら製紙会社の枠を越えるべきだ」。みずほ銀行産業調査部の加古惇也調査役は化学など異業種のM&A(合併・買収)が欠かせないと指摘する。30年に1兆円に育つとされる市場で日本製紙は勝てるのか。すでに時間との闘いとなっている。(古川慶一)



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