フィリピン、対米手探り ドゥテルテ政権半年 2016/12/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「フィリピン、対米手探り ドゥテルテ政権半年」です。





 【マニラ=遠藤淳】フィリピンのドゥテルテ大統領が自立外交の旗の下、同盟国の米国から離反する一方で中国やロシアに接近し、南シナ海問題の構図を一変させた。ただ、トランプ次期米政権との距離を探る動きも。国内では薬物犯罪の一掃を進め、激しい言動は止まらない。大統領就任から30日で半年。圧倒的な支持を背に、自己の政治手法への干渉を嫌うドゥテルテ氏の強権ぶりに拍車がかかっている。

 12日、ドゥテルテ氏は笑顔で1人の男を大統領宮殿に迎え入れた。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁だ。金氏はアキノ前政権下で滞ったAIIB参加の手続きが済んだことに謝意を示し「フィリピンの2件に融資したい」と述べた。

 ドゥテルテ氏は19日、趙鑑華・駐比中国大使と会談。趙氏は「テロや薬物が国の問題だと承知している。手助けしたい」と1440万ドル(約17億円)相当の武器供与と5億ドルの融資を申し出た。

 「米国の4億ドル? そんなものいらん」。ドゥテルテ氏は19日の演説で、薬物犯罪に対する比警察の捜査手法を問題視して米国が経済援助を保留したことに反発。列席したソン・キム駐比米大使を前に豪語した。

 ドゥテルテ氏は「主権国家としての自立した外交」を掲げる。薬物犯罪対策を批判したオバマ米大統領を繰り返し罵倒。米国との決別を口にし、合同軍事演習の規模を縮小する一方、中国とは10月の習近平国家主席との会談後、距離を縮める。

 両国が領有権を争うスカボロー礁(中国名・黄岩島)近海で今月上旬、行方不明だったフィリピン漁民2人が中国海警局から比沿岸警備隊に引き渡された。警備隊が同礁に近づけたのは中国が実効支配を固めた2012年以来初。両国が火花を散らした南シナ海の景色は変わった。

 中国が南沙(英語名スプラトリー)諸島の人工島に防空設備を配備したことが表面化した際もロレンザーナ比国防相が「重大な懸念」と述べただけ。ドゥテルテ氏は逆に「石油を共同開発しよう」と中国に呼びかけた。

 ドゥテルテ氏はロシアにも秋波を送る。プーチン大統領を「私のヒーロー」と公言。ロレンザーナ氏を国防相として初めてモスクワに送った。報道によると、ロシアから軍装備品提供の申し出を受けた。ドゥテルテ氏は自身の同国訪問も探る。

 「中ロが新たな秩序をつくれば真っ先に加わる」。米国に対抗する二大国に擦り寄るドゥテルテ氏。大学では比共産党創設者シソン氏に師事した。旧宗主国の米国に好意的な一般国民と一線を画す外交姿勢を見せる。

 来月就任するトランプ次期米大統領とは、関係改善をにらみ出方を瀬踏みする。「あなたのしていることは素晴らしい」。ドゥテルテ氏は2日の電話協議でトランプ氏が発した言葉を紹介。米現政権が批判してきた薬物対策に理解が得られたとして「トランプ氏は友達だ」と持ち上げた。

 ドゥテルテ氏の登場で、南シナ海を巡る国際情勢は大きく変わった。日米が中国に対抗する構図は、中国と連携するフィリピンの変化で綻びを見せる。同国が来年議長国を務める東南アジア諸国連合(ASEAN)は対中強硬派が減り、存在感が低下しかねない。ドゥテルテ氏が世界に投げかけた波紋が広がるのはこれからだ。



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