プロ不在我流の危うさ 2018/3/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「プロ不在我流の危うさ」です。





 トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任した。就任からわずか1年2カ月弱。意に沿わない閣僚や側近が次々と辞めさせられる更迭劇がまた繰り返された。ティラーソン氏の例は、その一団に加えられたというだけで済む話ではない。今回の更迭は2つの危うさを想起させる。

 一つは、外交のプロの軽視だ。外交には相手がある。外交のプロが長年培ってきた交渉のルールや常識の無視は混乱を招く。例えば非核化。いつ、どこで、誰が検証するのか。資金が必要ならどこから持ってくるのか。国際法上問題はないか。

 これらを詰めるのは政治家だけでは難しい。トランプ流のトップ外交には、過去のしがらみにとらわれないで局面を打開できる利点はある。一方で今回のティラーソン氏の更迭劇の背後にはこんな観測がある。

 トランプ氏が目指す5月までの米朝首脳会談の実現に向けて米国務省が過去の経緯や論点を洗い出し始めた。論点を解決しようと考えれば、5月までに間に合う保証はない。それを疎ましく思ったトランプ氏がティラーソン氏の解任に動いたという見立てだ。

 米朝首脳会談に向けて外交のプロを排除したいのではないか、とみられても仕方がない。ティラーソン氏が外交官を使いこなせていなかったという批判はあるものの、国務省のトップ切り捨ては、外交のプロを遠ざけるメッセージと受け取られかねないからだ。

 もう一つの危うさは情報機関を偏重したいのではないか、という疑問だ。トランプ氏は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領特使として北朝鮮を訪問した大統領府国家安保室長と面会した。その橋渡し役を担ったポンペオ米中央情報局(CIA)長官がティラーソン氏の後任になった。

 「民主主義国家の外交というのは、インテリジェンスと政策決定を分離するのが常識」(外交政策研究所の宮家邦彦代表)。政策決定において情報機関の役割が増すと、時に非合法活動も辞さない組織の力が強くなり過ぎるリスクがある。

 民主主義国家の政策決定は透明性と説明責任が生命線だ。その点をトランプ氏が面倒だと感じているとすれば、看過できない。トランプ氏の我流外交は、そんな不安を抱かせる。

(政治部次長 吉野直也)



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