プーチン体制に綻び、長期政権に閉塞感 デモ頻発 政権内の 統制にも乱れ 2017/11/5 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「プーチン体制に綻び、長期政権に閉塞感 デモ頻発 政権内の統制にも乱れ」です。





 武力行使も辞さない強権により内外で圧倒的な存在感を見せてきたロシアのプーチン大統領。その体制に綻びが目立っている。全国各地で反政権デモがじわじわと広がり、政権内の統制が乱れる兆候もある。来年3月に大統領選を控え、ロシアで何が起きているのか。

 プーチン氏の誕生日の10月7日、若者らが声をあげた。「プーチンのいないロシアを」。政権の汚職を糾弾し、大統領選への出馬をめざす反体制指導者ナワリニー氏を当局が一時拘束したことに対する抗議運動が各地で起きた。

 プーチン氏の故郷サンクトペテルブルクでは5千人規模のデモ隊が反プーチンを叫びながら行進し、治安機関に数十人拘束された。「政治に競争が必要だ」「クリミア併合の結果、米欧と関係が悪くなった。生活もよくならない」。参加者からはこんな不満がもれた。

 ロシア全体からすればデモの規模は大きくはない。だが当局が反体制派への弾圧の手を強めているにもかかわらず、全国に広がったデモは今回で年初から3度目。国民を熱狂させた2014年のウクライナ領クリミア半島併合の効果は薄れつつある。

 世論調査によると、プーチン氏の支持率はなお8割を保つが、「変化」が必要と考える国民も増え、独立系レバダセンターの調べでは5割を超えた。プーチン氏の支配は18年におよび、大統領選で再選されればさらに6年。国民の間で閉塞感が漂う。

 外交・経済の停滞が閉塞感を一段と濃くしている。ウクライナ侵攻は4年目に入り、米欧の経済制裁が続く。

 政権は対ロ融和を唱えたトランプ米政権に関係改善を期待したが、米議会は逆に対ロ制裁を強化し、制裁解除の望みは消えた。米大統領選への介入が裏目に出た。プーチン氏周辺が主要企業を支配する非効率な経済の改革も進まず、成長の道筋は描けない。

 閉塞感が強まる構図は政権内も同じだ。プーチン氏は次の任期中に70歳となる。「プーチン後」も意識され始めるなかで、権力闘争がうごめき、統制の緩みを示す事例も相次ぐ。

 9月、ロシア南部のイスラム共和国チェチェン。ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害に抗議する大規模なデモが起き、共和国のカディロフ首長は「政府の立場に反対する。私には私の考えがある」と表明した。

 プーチン政権は3月、国連安全保障理事会で中国とともにロヒンギャ問題に懸念を表明する声明の決議の阻止に動いた。地方指導者にすぎないカディロフ氏が大統領の専管事項である外交政策を公然と批判したのは、自らの力を誇示する狙いだったとみられている。

 プーチン氏に次ぐ実力者といわれる国営石油会社ロスネフチのセチン社長は9月、司法当局への怒りに震えた。ロスネフチによる企業買収に絡んだ収賄容疑で昨年11月にウリュカエフ経済発展相が逮捕された事件の公判で、両氏による会話の録音テープが公開されたからだ。

 ウリュカエフ氏は、政権内でセチン氏と反目するメドベージェフ首相の側近だった。収賄容疑について公判で「セチン氏と連邦保安庁(FSB)幹部にはめられた」と主張しており、事件は権勢を振るうセチン氏と、対抗勢力の権力闘争と受け止められている。政権内の抗争がここまで表ざたになるのは異例だ。

 政権は次の大統領選で「投票率70%、得票率70%」を目標にしてきたとされる。プーチン氏が政権内の勢力ににらみをきかせ、再選後も安定を保つには、国民の高い信任を見せつけなくてはならない。

 17年は帝政ロシアが倒れ、世界初の社会主義国家の樹立につながったロシア革命から100年。世界的な話題にもかかわらず、プーチン政権は極力、触れることを避けている。大統領選を前に変化を求める社会の機運が高まるのを恐れているようにみえる。「ツァーリ(皇帝)」とも称されるプーチン氏の足元は見かけほど盤石ではない。

(モスクワ=古川英治)



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