プーチン帝国の行方(上)圧勝演出透けるおびえ 大規模不正で投 票水増しか 広がる不満忠誠試す 2018/3/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「プーチン帝国の行方(上)圧勝演出透けるおびえ 大規模不正で投票水増しか 広がる不満忠誠試す」です。





 プーチン大統領が通算4選を果たした18日のロシア大統領選。選管の発表によると得票率は7割を超えた。プーチン氏は「高い信頼の表れだ」と誇ってみせたが、有力な政敵を事実上排除したうえで、執拗に高い投票率や得票の演出にこだわる姿勢には、不満を募らす国民に対する独裁者のおびえも透ける。およそ四半世紀も続くことになった「プーチン帝国」はどこに向かうのか。

大統領選当日の18日、自身の選挙本部で演説するプーチン大統領=ロイター

不正行為が相次ぎ報告された(18日、ロシア中西部タンボフで投票箱に複数枚の投票用紙を詰め込んでいるとみられる男の様子)=AP

 有権者が途絶えた隙をうかがって選挙管理委員の女性が素早く投票用紙を箱に差し込む。別の委員が差し出した新たな用紙を受け取り、また投票箱へ。もう一人の女性も加わり、慣れた手つきで次から次へ投票箱に用紙を突っ込んでいく。

 モスクワ南東部リュベルツィ市の投票所で行われた組織ぐるみの票水増しの一部始終を監視カメラがとらえた。映像は監視団体が18日昼にインターネット上に公開。繰り返し再生された。選管は責任者らを解任し、不正票を無効にすると発表するなど、火消しに追われた。

実際は55%?

 「投票率70%、得票率70%」。政権は今回の選挙でこんな高い目標を課した。プーチン圧勝が確実な選挙への関心は低く、政権はなりふり構わず投票率のてこ入れに動いた。複数の有権者は役所や企業の上司から投票に行くよう強制されたと取材で明かした。結果は得票率76%、投票率67%。目標をほぼクリアした。

 全国に監視・調査団を派遣した反体制派指導者ナワリニー氏は「実際の投票率は55%。政権は偽装せざるをえなかった」と大規模な不正があったと指摘する。欧州安保協力機構(OSCE)の選挙監視団も「投票率を上げるため、有権者に不適切な圧力がかけられた」と批判した。

 当選が確実だった選挙でここまで票集めに躍起になったのはなぜか。「あらゆる勢力ににらみをきかせ、政権の安定を保つには国民の絶対的な支持を示す必要がある」。政府に近い筋は選挙前にこう説明した。

 ロシア憲法は連続3選を禁じており、プーチン氏にとっては次の6年が最後の任期になる。本人も憲法改正による再選を否定しているだけに、これから政権内で「ポスト・プーチン」をにらんだ権力闘争が激しくなってもおかしくない。

 政権内の抗争を表ざたにした現役閣僚の汚職事件やその後の公判など、昨年から統制の緩みを示す事例も相次いでいる。プーチン氏にとっては国民の圧倒的支持を誇示できなければ政権が早々にレームダック(死に体)になり、後継を決める政治力も失う恐れがあった。

反体制封じ込め

 政権側には汚職を糾弾し、反政権デモを繰り広げる反体制指導者ナワリニー氏らの動きを圧倒的な得票で封じ込める思惑もあったようだ。景気停滞や長期支配で深刻化する行政の腐敗に不満は高まっており、反政府デモに加わる若年層は全国的に増え続けている。

 「反体制派の無許可集会をどう思うか」「秩序の変更を求める勢力に武力を行使する準備はあるか」。1月、ロシア南部北カフカス地域で従軍する兵士にこんなアンケートが配られた。ナワリニー氏ら反体制派や社会活動家の名を並べ、好きな人物をひとり選ばせる問いもあった。

 デモ隊への発砲を命じた時、部隊が執行を拒んで反旗を翻せば、政権転覆につながりかねない。忠誠心を調べるアンケートの質問には過去の独裁政権と同じ末路をたどりたくないとのおびえが透ける。プーチン氏は2016年、デモの鎮圧も任務とする大統領直属の「国家親衛隊」を創設。自らに忠誠を尽くす警護責任者を務めた人物を司令官に充てている。

 再選を決めた直後の記者会見でプーチン氏は5月に始まる新任期の体制について「人事をきょうから考え始める」と答えた。間違った決断をすれば、歴史上のロシア皇帝のように寝首をかかれるかもしれない――。圧勝を演出した選挙とは裏腹にプーチン氏の胸中はそれほど穏やかではない。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です