ホテル再生改善素早く IT駆使、良い提案は即実行 2017/2/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「ホテル再生改善素早く IT駆使、良い提案は即実行」です。





 業績不振のビジネスホテルを相次ぎ再生し、売り上げを毎年2ケタ伸ばす会社が高松市にある。川六社長の宝田圭一は母体の老舗旅館を宿泊に特化したホテルに転換し、その手法を応用する。従業員に意思を浸透させ、最新IT(情報技術)機器は惜しまず投入し効率化。稼働率は業界トップクラスの約9割を持続する。強さの源はスピード感ある実行力だ。

 業務の改善提案、宿泊客の感想、客室の点検状況、各種報告書――。宝田が常に持ち歩く端末には1日に50件以上の情報が上がってくる。経営する5ホテルの従業員約50人と文書保存サービス「エバーノート」を通じ直接結ばれている。

 例えば「雨天時、フロントにタオルを用意」「コミックコーナーに子供用絵本」など、改善提案は宝田がすぐできると即決すると、その瞬間から全社で実行に移す。一時期設けた目安箱は対応が遅れるのでやめた。

 ホテル運営で最も重視するのが利用客の声だ。月1400にも上るアンケートの回収数を人事評価の指標にする。旅行会社に頼らぬ集客は反応が直に早く伝わることにこだわるから。客に直接聞き取りして毎月報告することも義務付ける。

 「継ぐ気持ちは全くなかった」。1877年に創業した川六は、著名作家らも愛用した老舗旅館だった。義母の病を機に27歳で入社した時は瀬戸大橋開通ブーム。ただ、宴会依存度が高く徐々に行き詰まり借金をして借金を返す悪循環に。社長を託された2000年の負債は5億円に上った。

 売却して廃業するか、宴会に特化するか、宿泊に特化するか――。飲食店が集積する立地を生かし利益率を追求できるのが「泊まる機能にサービスを集中させたビジネスホテル」だった。改築費は8億3千万円。新規担保はなく銀行に3カ月通い続け説得。約40人の従業員には窮状を訴え7人に減らした。他ホテルに再就職のお願いもした。

 赤字体質を脱した川六は08年のリーマン・ショック以降、売り上げが激減する同業が続出する中、余力を維持した。11年の熊本を皮切りに「エクストールイン」名で好物件の再生に乗りだす。

 土地、建物は所有しない持たざる経営が原則。従業員も引き継いで再教育し事業展開が早い。1泊6千円前後を中心価格にし、豪華な非日常ではなく「生活必需品」として絞ったサービスに徹する。ルームサービスや部屋への荷物運搬は断り「できない・しないことを決めることで、やるべきことが明確になる」。

 旅館のDNAを受け継ぐ接客は人員を手厚くする一方、そのゆとりを生む効率化への投資は惜しまない。電話着信時に顧客情報を自動表示したり、清掃状況を管理したり、機器を駆使することで先回りした応対にも有効だ。ホテル情報はインターネット上に集約し、作り替えの手間がかかる紙の冊子も廃止した。

 愛媛と山口にも進出し5ホテルの総客室数は809室になった。売上高は15年で3億円から13億円に伸びた。今後は3千室が目標だ。=敬称略

(高松支局 深野尚孝)



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