ポジション 強い米経済は幻か 潜在成長率2%割れ、円安・ドル高息切れ FRB見通しに危うさも 2015/08/04 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「ポジション 強い米経済は幻か 潜在成長率2%割れ、円安・ドル高息切れ FRB見通しに危うさも」です。





 米国の利上げ期待を背景にした円安・ドル高で息切れが目立ってきた。米景気回復が力強さを欠き、失業率は下がっても、賃上げを通じて物価を押し上げていくとの絵が描ききれていないためだ。米連邦準備理事会(FRB)事務局が作成した経済見通しも潜在成長率が2%を下回り、危うさをはらむ。積極的には円売り・ドル買いを進めにくい状況になりつつある。

 7月31日発表の4~6月の米雇用コスト指数は市場予想を大幅に下回る0.2%の上昇で、記録をさかのぼれる1982年以降で最小にとどまった。FRBが重視する賃金の動向を示す指数が振るわなかったことで、9月利上げが遠のいたとの見方が強まり、円相場は発表直後、1円近くも円高・ドル安に振れた。

 ときには悪い指標も出るが、徐々に良い指標が増えてくる――。外国為替市場ではこんな期待も根強いが、景気指標の強弱が入り乱れた状況に変化はない。金融政策の先行きへの見方を映す米2年債金利は0.7%台を天井に一進一退で、米10年債金利も2%台前半にとどまっている。

 米景気回復の先行きが見通しにくい状況に重なったのが、FRBの事務局が作成した2020年までの経済見通しだ。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)のために作成したGDP伸び率や潜在成長率などの予測が誤ってインターネット上で入手可能な状態となり、FRBが7月24日やむなく公表に踏み切った。

 「米国の潜在成長率が2%を割っているのか」。日本の政策当局者は思わず目を疑ったという。並んだ数値から読み取れるのは、潜在成長率がすでに1%台後半に低下し、20年になっても物価指数の伸びが2%に届かないという力強さを欠く米経済の姿だ。今年10~12月の政策金利は0.35%で、年内に想定している利上げは1回だけだと読み取れる。

 三菱東京UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「外為市場は利上げを織り込んで前のめりにドル高が進んでいる。反動が出やすい地合いだ」と指摘する。年内1回の利上げがあったとして、問題は2回目、3回目を見通せるかどうか。米経済の先行きに明るさが見えなければ、連続利上げを織り込んでいる円相場は調整を迫られる可能性があるという。

 「実際の潜在成長率はさらに低く、1.5%を切るのではないか。金利もFRBの想定通りに上がらない可能性がある」。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストはこう指摘する。米国では労働力の増加が鈍り、企業も収益機会を十分見いだせていない。2020年に政策金利が3.3%、10年債金利が4.2%に達するとの見通しも危ういという。

 もちろん、為替相場は相手通貨との比較で決まるので、米経済が相対的に強い限りはドル高の地合いは変わりにくい。市場参加者の間で「米利上げまでは円安基調」との暗黙の合意が広がっていることもあり、一気に円高・ドル安に転換するとみる向きは少ない。

 それでも米経済が勢いを欠くなか、125円に近づく局面では積極的な円売り・ドル買いは出にくくなっている。年金などの機関投資家の円売りにも陰りが見えてきた。円相場で125円を超えて円安が進むには、まだ時間がかかりそうだ。

(石川潤)



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