ポジション 日米、かすむ物価上昇期待 人民元・原油安で暗雲 2015/08/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「ポジション 日米、かすむ物価上昇期待 人民元・原油安で暗雲」です。





 金融市場で日米の物価上昇期待がかすんできた。11日の人民元の切り下げを機に、中国景気の減速懸念や原油の先安観が強まったためだ。米国の利上げが遅れるとの観測に加え、日銀の追加緩和観測も再びちらつき始めた。

 12日の東京市場でBEIと呼ばれる指数が急低下した。BEIとは「ブレーク・イーブン・インフレ率」の頭文字。物価に連動する仕組みの国債の価格から算出される今後10年間の予想物価上昇率だ。これが前日より0.08%低い0.86%となった。低下幅は今年最大を記録した。

 11日の米国でBEIは1.6%台前半と今年最低の水準に落ち込んでいる。市場関係者が描く期待インフレは先進国で軒並みしぼんでいる。

 引き金は人民元安だ。中国人民銀行が銀行取引の基準値を2日連続で切り下げ、2日間で3%近く下落した。市場では「今後1年間で10%ほど下落する可能性が高まった」(バンクオブアメリカ・メリルリンチ)といった見方が出ている。中国の輸出品価格が下がることで世界中の物価上昇が抑えられるとの観測につながっている。

 より根深いのは中国景気の減速懸念だ。もともと中国は輸出や消費の減速感が強まっていた中で人民元切り下げを公表したため「中国景気に対する疑心暗鬼が一気に増幅した」(みずほ証券の上野泰也氏)。市場では新興国全体の需要鈍化も連想され、アジア株は軒並み下落した。

 原油安にも拍車がかかり、11日にはニューヨーク市場で1バレル43.08ドルと終値ベースで3月に付けた今年の安値(43.46ドル)を下回った。1~3月の原油安局面と比べ、新興国の需要鈍化が強く意識されている。

 利上げを探る米連邦準備理事会(FRB)にとって、人民元切り下げやアジア各国の株安・通貨安は逆風だ。物価上昇期待の鈍化に加え、ドル高は米景気を冷やしかねない。市場では「FRBが9月に利上げする機運はそがれた」との声が広がる。

 市場が織り込む今年末の米政策金利は0.295%なのに対し、来年末では0.935%。この差の0.64%は市場が予想する来年1年間の利上げ幅だ。1回の利上げを0.25%とすれば、利上げは2~3回という予想で、年8回のペースで利上げした2004~06年とは景色が大きく異なる。

 日銀にとっても中国の変調は頭痛の種だろう。黒田東彦総裁は7日の記者会見で「(中国は)7%前後の成長が今年、来年と続くことが一応見通せる」と話していた。日銀の経済見通しは中国経済の回復を前提としており、そこが揺らげば中国向け輸出の低迷は避けられない。

 実際、日銀が12日公表した7月14~15日の金融政策決定会合の議事要旨では複数の政策委員が「中国経済のさらなる減速が生じた場合の影響に注意が必要だ」と懸念も示していた。

 債券市場では新発10年物国債利回りが一時0.355%と約3カ月ぶりの水準に低下した。ある債券トレーダーは「いったん後退していた追加緩和観測がにわかに意識され始めている」と話す。人民元切り下げを機に、通貨安競争の色合いも見え始めている。(後藤達也)



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