ポジション 米利上げ1カ月、「ドル高」に勝った「円高圧力」 リスク回避ムードが拡大 2016/01/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「ポジション 米利上げ1カ月、「ドル高」に勝った「円高圧力」 リスク回避ムードが拡大」です。





 昨年12月16日に米連邦準備理事会(FRB)が事実上のゼロ金利政策を解除してから、まもなく1カ月となる。FRBの利上げは新興国通貨などに対するドル買いを生んだものの、円買い圧力はそれを上回り、ドルは円に対しては大幅に下落した。特に今年に入ってから市場にリスク回避的なムードが拡大。「逃避通貨」と目される円が、ドルを含む様々な通貨に対して買われた。

 米利上げ後に円買い圧力がドル買い圧力に勝った様子は、多数の通貨に対する平均的な相場変動を示す日経通貨インデックスを見るとわかる。

 昨年12月15日から今年1月12日にかけてドルのインデックスは約2%上昇した。米利上げによる海外からの資金回帰などでドルが上がったことを示すが、円は約4%の上昇とドルを上回る。両者の差がドル安・円高進行の裏側にある。利上げ前に1ドル=121円前後だった円は一時116円台に上昇した。

 「米利上げ局面開始後にむしろ円高圧力がかかるのはこれまでにも見られた現象」とJPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉氏は言う。過去4回(1994、97、99、2004の各年)の米利上げ開始前後のドル・円相場を平均した指数を見ると、ドル安・円高方向への振れが確認できる。利上げを織り込んで買われたドルが、利上げの少し前から売られるパターンだ。利上げが確実視されるようになったことによる材料出尽くし感がありそうだ。

 もっとも過去4回では利上げ1カ月後のドルの対円下落率が平均1%程度だったのに今回は3%程度と大きい。その要因は市場のリスク回避ムードの高まりだろう。

 一般に市場がリスクをとることに積極的になると、円のような超低金利通貨を借りて相対的に高金利の通貨を買う取引が出やすい。リスク回避の空気が広がるとこの取引が巻き戻され、円買い戻しが起きる。円が「逃避通貨」とされるゆえんだ。「リスク回避ムードなら円買い」という条件反射的な反応により、単なる巻き戻し以上の円買いが起きることもある。

 12日の米、13日の日本と株価は上昇したものの、年明け以降の内外の株式市場は不安定な動きを続けてきた。リスク回避ムードの背景にある要因として、ドイツ証券の大西知生氏は(1)減速する中国経済(2)米利上げに伴って資金流出に見舞われる新興国(3)過激派組織「イスラム国」(IS)や北朝鮮を巡る地政学リスク――の3つを挙げる。

 特に中国に関しては「ドルに事実上ペッグ(固定)している人民元の上昇が中国景気の足を引っ張ってきたため、大幅な切り下げの可能性が高まっている」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との警戒論が聞かれる。昨年夏の「人民元切り下げ」による市場混乱の再来が懸念されるわけだ。

 昨年12月の利上げ決定時には、FRBは2016年に0.25%ずつ4回の利上げを進めるとの解釈が聞かれた。しかし、市場混乱を受け、このシナリオに懐疑的な空気がさらに広がっている。日米の金利差(期間2年)も年明け以降縮小。思い切ったドル買いは進めにくくなった。

 12日発表の昨年11月の日本の経常黒字は市場予想を大きく上回る約1兆1000億円を記録。原油安による貿易赤字縮小などで経常黒字が膨らむなら、需給面でも円が買われやすくなりそうだ。

(編集委員 清水功哉)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です