マイナス金利下の資金調達(下) 融資・社債、長期化急速に 国内投資への波及は不透明 2016/04/09 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「マイナス金利下の資金調達(下) 融資・社債、長期化急速に 国内投資への波及は不透明」です。





 銀座の数寄屋橋交差点の戦後を象徴するビルのひとつとして知られた「ニユートーキヨー」。この跡地でヒューリックが商業施設とホテルが入るビルの建設を進めている。投じる資金は263億円。都心での不動産再開発の拡大に伴い資金需要は増すばかりだ。

 金利低下が続くなか、同社はこれまでは5年が中心だった銀行融資の期間を、新規に借りた分からは10年に延ばしている。2016年12月期の平均の借り入れ年数は5年超に延びる見通しで、「開発プロジェクトの平均期間に近づき、資金計画が安定する」という。

 銀行側の利害も一致する。貸し出しの原資となる預金の平均的な滞留期間などを考慮し、「5年まで」が企業向け融資の標準となってきた。だが、マイナス金利政策の影響で10年物国債の利回りまでもマイナス圏に沈む。融資金利にも低下圧力がかかるため、金利を高めに設定できる長期の融資にシフトしないと収益が確保しづらくなってきたのだ。

 社債の発行期間も急速に長期化している。JR西日本が2月に民間企業で最長の40年債を発行し、味の素も20年債で調達した。15年度に発行された社債の償還までの平均期間は11年8カ月と過去最長になった。14年度(平均7年4カ月)から一気に4年以上も延びる異例の事態だ。

 償還まで数十年となれば返済能力の分析は極めて困難で、そもそも発行企業が存続しているかどうかも不確実。金利変動による債券価格のブレも急拡大する。とはいえ、期間が短い社債の利率はいまやゼロ%寸前。年金基金などの機関投資家はリスク度外視で金利の絶対水準を優先するほかなく、超長期社債に需要が集まる。

 問題はマネーが国内工場の新設などに向かい、日本経済の援軍となるかどうかだ。3月に5年物社債をわずか0.09%の金利で発行したヤマトホールディングス。調達した100億円は主に東南アジアで輸送網の構築に振り向けるという。マイナス金利政策の追い風が吹くなかでも、調達した資金を国内で使うのは不動産などに限られる。

 データで確認しても資金調達環境の緩和と国内の設備投資の関係は弱まっている。金利水準が高かった1980年代後半から90年代始めまでは金融緩和で実質金利が低下すると、企業のキャッシュフローに占める国内の設備投資の比率が拡大する効果がみられた。

 90年代半ば以降、金利水準が低下するにつれて設備投資の感応度は弱まり、ここ数年は実質金利がマイナスまで低下しても設備投資は増えていない。大和総研の小林俊介エコノミストは「設備投資を増やしたいなら、規制緩和などを大胆に進め経営者に『日本は成長する国』との期待を抱いてもらう必要がある」と指摘する。

 金融緩和を呼び水に設備投資を刺激すると、金利が上昇した局面では利益が出ない低採算な事業が増えてしまいかねないといった副作用も指摘される。マイナス金利という未曽有の環境のなかで財務戦略をどう構築していくか。企業価値を左右する重い課題だ。

 藤原隆人、大酒丈典、真鍋和也が担当しました。



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