マネー異変 きしむ世界経済(3)「宴」去り、新興国に三重苦 2015/08/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「マネー異変 きしむ世界経済(3)「宴」去り、新興国に三重苦」です。





 マレーシアのナジブ首相が20日に漏らした発言が金融市場で話題を呼んでいる。「企業は海外に蓄えた現預金を国内に持ち帰ってほしい」

 原油輸出国の同国は資源安が直撃して景気が減速し、米国の利上げ観測を受けて資金流出が続く。中国株式市場の異変が混乱に拍車をかけ、通貨リンギは1990年代後半のアジア通貨危機当時の水準に沈んだ。度重なる為替介入を背景に外貨準備高は1年で3割も減った。市場はナジブ氏の発言を「打つ手が細った」と解釈し、リンギ売りに拍車がかかった。

成長の要因反転

 深刻な資金流出は新興国に共通する。インドネシアのルピアは17年ぶりの安値に沈み、ブラジルのレアルは左派政権が誕生した2003年以来の水準に落ち込んだ。

 英マークイットによると、新興国に投資する上場投資信託(ETF)から50億ドル(約6000億円)を超す資金が7月以降に引き揚げた。高い成長を求めて舞い込んだマネーが一気に逆流する。

 南アフリカのプラチナ大手ロンミンは7月末、複数の鉱山の減産を発表した。プラチナ相場の低迷で、およそ6千人の従業員が職を失う見通しだ。タイ国際航空も1400人を削減して、一部の米国路線の運航停止を決めた。拡大一辺倒だった新興国企業が戦略見直しを迫られる。

 新興国は08年の世界危機後の経済をけん引した。日米欧の金融緩和に伴うマネーの流入、中国の需要拡大、資源相場の高騰の3つが重なり、新興国ブームに沸いた。

 その構図が一変している。足元では米国の利上げが現実味を帯び、中国は景気の減速に直面する。原油先物相場は1バレル40ドル割れと歴史的な低水準に下落し、資源安に歯止めがかからない。成長を支えてきた条件が、逆に「三重苦」となって新興国の経済を襲う。

 ジャカルタ中心部の市場で主婦のタリさん(31)はため息をついた。インドネシア料理に欠かせないニンニクの価格が急騰したためだ。25日の価格は1キロあたり2万1000ルピア(約180円)。10日前に比べて3割も値上がりした。通貨安を受け、輸入に依存する食料品の価格上昇が続く。

戦略の修正急務

 タイやトルコなど新興国の多くが政情不安を抱え、物価高が進めば政権への不満が高まるのは必至だ。物価を抑えるには利上げが選択肢だが、いま金融を引き締めれば景気が急減速しかねない。金融当局は動くに動けない状態に陥っている。資金流出を自力で跳ね返す手段を縛られ、新興国は世界のマネー変調にぼうぜんと立ち尽くす。

 ただ、足元の混乱が1990年代後半に起きたアジア通貨危機のような激震を招くとの見方は今のところ少数派だ。

 新興国が危機に備えて蓄積した外貨準備高はなお7兆5000億ドルを超え、世界全体の6割強を占める。金融危機時に外貨を融通し合う「チェンマイ・イニシアチブ」など二重の安全網もある。なによりも巨大な人口が秘める潜在的な成長力は大きい。

 第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは「緩和マネーや中国の需要に頼った成長モデルを改める時期が来ている」と話す。「宴」が終わり、地道なインフラ投資や規制緩和など身の丈に合った成長戦略への軌道修正は急務だ。マネーの変調をどう生かすか。新興国が突きつけられた課題だ。

(クアラルンプール=吉田渉)



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