マネー異変 きしむ世界経済(4)日本、踊り場脱却に影 2015/08/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「マネー異変 きしむ世界経済(4)日本、踊り場脱却に影」です。





 「中国では稼ぐより損失を出すなという状況です」。住友建機の井手幹雄社長はこんな風に打ち明ける。同社は2015年度の中国工場での生産を1000台程度にとどめ、中期経営計画と比べ4割減とする。

黒田日銀総裁は強気(26日、ニューヨーク)=ロイター

追い風やんだか

 今回の市場の動揺は米利上げ観測に中国景気の減速が重なったことが発端だ。対岸の火事にみえるが成長を外需に頼る日本経済に重い意味を持つ。安倍政権発足を機に円安株高が始まってから約3年。マネーの異変は回復の実力とリスクを見つめ直すよい機会だ。

 15年4~6月期の上場企業の連結経常利益は前年同期比24%増え過去最高だった。SMBC日興証券は1年前に比べ20円の円安・ドル高が経常利益を8ポイント押し上げたと試算する。財政出動や法人減税も加えると「過去3年の増益分の4割は自助努力だが6割は追い風だろう」(野村証券の海津政信シニア・リサーチ・フェロー)という。

 追い風はやみつつある。市場の動揺で為替相場は一時1ドル=116円台をつけ、115円前後の企業の平均想定為替レートに近づいた。第一生命経済研究所によると中国の実質経済成長率が1ポイント下がると、日本の成長率も0.2ポイント低下する。

 日本経済が今向き合っているのは、リーマン・ショック後の各国の財政出動と金融緩和でかさ上げされてきた世界の総需要の減退だ。オランダ経済政策分析局の「世界貿易モニター」によると、世界の貿易量は昨年12月をピークに頭打ちとなった。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の調査では、15年に前年比1%減る世界の主要事業会社の設備投資は16年に4%減る。

 4~6月に実質経済成長率が1.6%減だった日本。回復の踊り場からの脱却を探るが、頼みの外需が揺らげば「企業収益の改善が賃上げと消費の底上げにつながる」(甘利明経済財政・再生相)という好循環が揺らぐ。「7~9月もマイナス成長になり得る」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)との声もある。

 政策余地は乏しい。黒田東彦日銀総裁は26日の講演で必要があれば「ちゅうちょなく調整を行う」と追加緩和に含みを持たせた。だが、緩和の副作用である必需品の値上がりは消費者心理に水を差し個人消費の重荷だ。

 「それなりの財政措置を」(二階俊博総務会長)。自民党内では早期の補正予算で公共事業などの追加を求める声が出ているが、財政悪化を招くうえ人手不足でなかなか工事が進まない。

 カギはやはり企業部門の対応だ。資源安で業績が落ち込む三井物産は採掘コストの削減に取り組む。オーストラリアのローブ・リバー鉱山では機械補修の内製化を進め点検の頻度も見直した。15年4~6月に90億円だったコスト削減額を積み増し価格下落に対応する。逆風の中、17年3月期の目標に掲げる自己資本利益率(ROE)10~12%達成に知恵を絞る。

成長戦略点検を

 政府も停滞気味の成長戦略の再点検を迫られる。鳴り物入りで始まった農地バンクの賃貸実績は目標の2割弱にとどまる。「若い人が農業を始めても土地が借りられない」。農業に詳しいエム・スクエアラボの加藤百合子社長は嘆く。

 世界経済の未来を誰もが信じていた06年、日本の物価も上昇に転じたが、金融危機後の景気後退で日本経済はデフレに逆戻りした。米国はいずれ利上げに動く。新興国の需要回復も時間がかかる。市場の乱気流の深度を読み影響を抑える手腕が試されている。

(石川潤、松崎雄典)



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