モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る物価観、家計と日銀 ズレ 慶大教授 白井さゆり氏 2017/11/28 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る物価観、家計と日銀ズレ 慶大教授 白井さゆり氏」です。





 ――日銀が異次元緩和に踏み込んだ際に審議委員を務めていました。これまでの金融緩和をどう見ますか。

 「金融緩和が需要を拡大し、それによってインフレを押し上げていくという効果は、かなり限定的だった。株や為替への影響はあったが、そこから実体経済に強い波及は起きていない。結局、家計の消費がそれほど強くなかったということ」

 「日銀はデフレマインドが根強いと主張する。しかしそもそも日本は物価が下がり続けるデフレスパイラルではなかった。調査をみると、家計は物価が上がっていくと答えている。物価が上がって支出が増え、可処分所得が落ちたと感じている。政策金利の水準を取り戻すために2%のインフレを望む日銀とは分断が広がっている」

 ――日銀は具体的にどうするべきでしょうか。

 「2%の物価安定目標に上下1%を許容範囲とすればよいのではないか。物価が1%でも信認を失わずに出口戦略に迎えられるし、2%目標をあきらめていないことを周知できる。なにより家計や企業も日銀がなにがなんでも毎年2%達成を目指していると誤解するのを回避できる」

 ――大規模緩和と弱いインフレという状況はほかの先進国も同じです。

 「みんな不思議に思っている。なぜ高い成長率でも物価が上がらないのか。グローバル化が進み、自国の環境だけで賃金を上げられなくなったことや、技術を持つ人とそうでない人で二極化が起きた点も影響している」

 「ただそれだけではない。たとえば不動産価格の上昇はバブル期と違い、都市部など局所的にしか起きていない。金融機関に聞くと、世界的に株式投資は配当狙いが増えており、値上がり期待が薄い。経済成長が今後も続いていくという期待感が低いのではないか」

 「欧州も資産買い入れの縮小を始めるが、金融正常化へのペースは非常にゆっくりだ。高齢者の年金資産は利回りが低く、受給者はむりやりリスクの高い投資に乗り出している。『もう超金融緩和はやめてほしい』という声は欧州でも多い」

 ――マネーの動きがグローバル化した影響もあるのでしょうか。

 「金融緩和の効果はその国だけでなく、世界全体に波及して低金利が広がっている。実体経済が成長しているのは新興国なのに、金融政策は先進国が主導している。そこにも無理がある。新興国からすると、資本の流出入が先進国の政策に左右されてしまう」

 「金融緩和は為替が目的のようになってきた面もある。通貨安を誘導しようと政策金利を引き下げる動きにつながる。G7は為替介入しか言及しないが、自国のことだけを考えると全体の利益を損なう。まるで『囚人のジレンマ』だ」

(聞き手は高見浩輔)

=随時掲載

 しらい・さゆり 2011年から16年まで日銀審議委員。マイナス金利政策を導入の際は反対票を投じた。国際通貨基金(IMF)エコノミストなどを歴任。54歳



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