ユーチューブ、TVを丸ごと手の中に CEOに聞く 動画同 様いつでも視聴 2017/7/8 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「ユーチューブ、TVを丸ごと手の中に CEOに聞く 動画同様いつでも視聴」です。





 【シリコンバレー=小川義也】米グーグル傘下で世界最大の動画共有サイト「ユーチューブ」が、25兆円規模の有料テレビ市場を侵食し始めた。4月、米国で地上波などの番組をネット配信する「ユーチューブTV」を開始。米国外での展開も視野に入れる。2005年の創業から12年。視聴者が15億人を超えてなお膨張する「動画の巨人」の狙いは何か。スーザン・ウォジスキ最高経営責任者(CEO)に聞いた。

 「我々は『テレビ』を作りかえようとしている」

 ニューヨークやロサンゼルスなど主要5都市で始まったユーチューブTVのターゲットは、1980年から2000年ごろに生まれた「ミレニアル世代」。動画はスマートフォン(スマホ)で好きなときに楽しむのが基本で、決められた時間にテレビの前に座るのは嫌う。スポーツ中継やドラマに関心がないわけではないが、従来のテレビ放送は「彼らのライフスタイルに合っていない」とウォジスキ氏はいう。

ユーチューブのクリエーターとファンら約3万人が集まるイベントに参加したウォジスキCEO(6月22日、カリフォルニア州アナハイム)

 ユーチューブTVの加入者はスマホのアプリやウェブサイトで、四大ネットワークを含む50近いチャンネルが視聴できる。最大の特徴は放っておけば“流しっぱなし”のテレビ放送を、好きな時に視聴できる「ビデオ・オン・デマンド(VOD)」に変える仕掛けにある。好みのジャンルやキーワードを登録すると、該当する番組を容量無制限のクラウドに自動で保存。録りためた番組は簡単に検索・再生できる。

 視聴履歴などを分析し、加入者一人一人にオススメの番組を紹介するユーチューブでおなじみの「レコメンデーション」機能にも力を入れる。1契約で最大6人まで個別に好みなどを登録できて、料金は月35ドル(約3900円)。米国の一般的なCATVや衛星放送の半分以下に抑えた。

 米国で広がるテレビ番組のネット配信サービスは米AT&Tやソニーなどが先行しているが、グーグルの技術力と強大なインフラ、そして15億人という圧倒的な視聴者基盤を持つユーチューブ参入のインパクトは小さくない。

 「米国だけでも大きな事業だが、興味がある国はいくつかある」

 プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、16年の世界の有料テレビ市場規模は2215億ドル(約25兆円)。収益の大半を広告に依存するユーチューブにとって、テレビ広告費を上回る有料テレビ市場の魅力は大きい。近く10都市を追加するなど、当面は米国市場の開拓に注力するが、ウォジスキ氏は将来の海外展開にも意欲を示す。

 「次世代のクリエーターやメディアのコンテンツを世界中に届けるグローバルなプラットフォームをつくること。それが我々の使命だ」

 創業間もないユーチューブをグーグルが16億5000万ドル(約1800億円)で買収したのは06年。当時の売上高が約100億ドルのグーグルにとって大きな賭けだった。だが、世界中の誰もがコンテンツを発信し、その視聴者と交流できるプラットフォームの潜在力を見抜いたウォジスキ氏らの読みは見事にあたる。

 今も1分ごとに400時間分の動画が世界中から投稿され、利用者の1日あたりの視聴時間は合計で10億時間に達する。その桁違いのスケールは、会員が1億人を突破した米動画配信大手ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOをして「ユーチューブに追いつく道のりはまだ長い」と言わしめるほどだ。

 最近では世界最大の交流サイト(SNS)を運営する米フェイスブックも、動画の中継機能の導入や独自番組への投資に力を入れる。だが、クリエーターを支援する仕組みの成熟度やコミュニティーの強さはユーチューブに一日の長がある。

 「問題を真摯に受け止め、すぐに対策を打ったが、世界は絶えず変化している。我々は提供するサービスやツールを常に見直す必要がある」

 好事魔多し。3月、テロ行為や差別を助長する投稿動画に企業や公共機関の広告が一緒に表示されていた問題が発覚。事態を重く見た広告主の間で一時、出稿をボイコットする動きが広がった。

 ユーチューブは動画と広告を自動でマッチングして表示するシステムを改善し、第三者機関によるチェックを導入するなど信頼の回復を急ぐ。だが過激思想の拡散を狙ったテロリストらのコンテンツをいち早く発見して削除するなど、より根本的な課題を解決する明確な道筋は見えていない。

 ウォジスキ氏は「動画の視聴体験を一新し、より豊かにするのには100年かかる。ユーチューブはまだ12歳。我々は初期の段階にいるにすぎない」と気を引き締める。

 Susan Wojcicki 1999年、グーグルに16番目の社員として入社。上級副社長としてグーグルの広告事業を立ち上げた。ユーチューブ買収では中心的な役割を果たし、14年から現職。5児の母で、仕事と家庭を両立させる女性のロールモデルにもなっている。



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