リーダーに必要な力 育成のプロ、日本への提言 2016/06/07 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「」です。





考え挑む「真面目な不良」に 期待裏切らず人に貢献を 経営者800人育成 野田智義氏

 多くの日本企業が重要課題と認識し、取り組みを強めているのが次世代リーダーの育成だ。グローバル化の進展などビジネスの複雑さが増す中、リーダーにはより高度な能力が求められるようになった。国際競争に勝てるリーダーは日本で育っているか。リーダー育成のプロの目に映る日本の現状とは。

 「日本を変えるリーダー」の育成に取り組むNPO法人アイ・エス・エル理事長の野田智義氏。15年で800人以上の経営者や経営幹部を輩出してきた。日本のリーダーの現状について聞いた。

 ――日本のリーダーの現状をどう見ますか。

 「世界の中で日本人一般のイメージは悪くないが、存在感は限りなく小さい。日本人のリーダーはしゃべらないので海外では何を考えているのかわからないと思われる。顔が見えず、自分を持っている人は少ない」

 「将来日本企業を担う若い人には経営学修士号(MBA)の核となる論理的、戦略的思考力や定量的分析手法、プレゼン術なども磨いてほしい。ただ、それ以上に自分の器を広げ、人間としての力をつけてほしい」

 ――リーダーの育成には何が必要ですか。

 「リーダーは育てるものではなく育つもの。我々は育ちやすくする触媒と場を提供している。自らと向き合い、周囲と鍛錬し合い、羽ばたける機会を提供することで人は成長できるはずだ」

 「日本では優秀な大学を出た『不真面目な優等生』が多い。与えられたものをそつなくこなすことはできるが意味や意義を考えない。日本に必要なのはむしろ『真面目な不良』。周囲に反発しながらも自分自身の頭で考え現実と向き合う人だ」

 ――リーダーの心得を3つ挙げるとすると。

 「まず自立・自律が出発点だ。他者や世間体に依存せず、自分は何者で何をしたいのか問い続ける姿勢だ。リーダーシップとは人を仕切ることではなく、自分をリードすること。大企業の経営者でもリーダーシップが足りない人が少なくない(自立と自律。自ら行動し挑戦する)」

 「組織に属していても、目の前の仕事で周囲の期待以上の成果を出し続ければ信頼が生まれ、より多くの挑戦の機会が得られる。ハウツーだけで成功した人はいない」

 「2つ目は周囲の人と真剣に向かい合い、信用を蓄積し、応援してもらえる環境をつくることだ。一人でできることは限られている。この人なら応援してやろうとどれくらいの人に思ってもらえるか。そのためには人の期待を裏切らず、人に貢献する姿勢が必要だ(周囲の信用に応え、応援団にする)」

 「好奇心も欠かせない。自分の知らないもの、自分とは違うもの、世界や他人への関心を持つこと。留学や海外インターンシップ(就業体験)などを通じて世界に挑戦すれば、自分は何者で何をしたいのか、何をすべきかが問われる。そして情熱。熱い思いがないところにリーダーシップは生まれない(未知への好奇心と情熱を持つ)」

(聞き手は流合研士郎)

 野田氏は東京大学法学部を卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。米マサチューセッツ工科大学で経営学修士号(MBA)、ハーバード大学で経営学博士号を取得した。目的意識の高い学友を見て「自分は何者で、これからどう生きていけばいいか」と自問自答し、興銀を退職。その後、ロンドン大学ビジネススクールの助教授などを務めるが、日本のリーダー不在の状況に危機感を覚え、2001年にNPO法人アイ・エス・エルを創設した。賛同する政財界トップら約300人が講師などとなって支援する。

多様な人材束ねる器を 海外赴任3度が効果的 世界最大級の人材コンサル アジア・太平洋代表 タルマ・ラジャ氏

 リーダーシップ開発に強みを持つ世界最大級の人材コンサルティング会社、コーン・フェリー・ヘイグループ。アジア・パシフィック地域代表を務めるタルマ・ラジャ氏に、グローバル視点で見た「日本のリーダー」とその育成策を聞いた。

 ――日本企業にはどのようなリーダーが必要ですか。

 「国内市場が縮小する日本企業はグローバル化が必要だ。中国やインド、中東など次の成長エンジンでの競争に打ち勝つには、多様性に富む人材を統合する人材戦略の構築とそれを率いるリーダーが欠かせない」

 「日本のリーダーの多くは新卒一括採用を経て入社し、長期の社内競争に勝ち残った人材だ。国内経験が中心で、リーダー的地位になる前にいきなり海外に出される。これは効果的でない。まず若い時期に海外に出して文化や制度を学ばせ、次に出るときは仕事を担わせ、3度目で結果にコミットさせる。この3段階でみるべきだ」

 ――次世代リーダーに必要な要素を3つ挙げてください。

 「1つが確固たるビジョンや目的意識を持つこと。2つ目は素早く学べる能力だ(あらゆることから素早く学ぶ能力)。座学や経験、やりとりの中で学ぶ包括的な能力で、人脈形成力は1つのカギになる。3つ目は変化の速い世界で不確実性に対処し組織をナビゲートする力だ(変化の速い中で進路を決める力)」

 ――どうすればリーダーを育成できますか。

 「当社では『10%・20%・70%アプローチ』を実践する。10%は集合研修、20%はコーチングで、残りは実地研修が中心だ。やや高めの課題を設定し、苦しみながら学ばせる。現リーダーが直接育成に関わりロールモデルとなるのが理想だ」

 「人事戦略には長期的視野が欠かせない。最近は取締役会の委員会で後継者育成を長期で議論するところも増えている」

(聞き手は森国司)



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