ロシアが歩む「百年の孤独」 2018/05/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「ロシアが歩む「百年の孤独」」です。





自信に満ちあふれた表情は相変わらずだが、ロシアを取り巻く国際環境は6年前とは一変した。とりわけ米欧との対立は深刻だ。7日の就任式で通算4期目に入ったプーチン大統領は、ロシアをどこに導こうとしているのか。

大統領は就任演説で「ロシアは強く、活動的で影響力のある国際社会の参加者だ。わが国の安全保障と国防力はしっかりと保たれる」などと表明。今後も大国ロシアを誇示する姿勢を示唆した。

ちょうど6年前。首相職から大統領に復帰したプーチン氏は就任式の当日、立て続けに大統領令に署名した。外交では旧ソ連の独立国家共同体(CIS)諸国などに続き、欧州連合(EU)との関係を重視する立場を強調。統一経済空間の創設も視野に入れ、協力を進める考えを示した。

また、米国との関係についても「対等、内政不干渉、相互利益の尊重という原則に基づき、安定的で予見可能な協調に努める」としていた。

現実は異なった。2014年春、ロシアによるウクライナ領クリミア半島の併合を機に、米欧との関係は一気に冷え込んでしまったからだ。続くウクライナ東部へのロシアの軍事介入は、さらなる関係悪化へと拍車をかけた。

プーチン政権は翌15年秋、こんどはシリアでの空爆に踏み切る。内戦終結や国際テロ組織の撲滅に寄与すれば、対米欧関係も多少改善するとの期待もあったようだ。だが米欧はロシアを独裁的なアサド政権の後ろ盾として批判、同政権による化学兵器使用疑惑でも鋭く対立している。

米国では16年の米大統領選への干渉を含む「ロシアゲート」疑惑がトランプ政権を揺さぶり、欧州でもロシアによるサイバー攻撃や偽情報流布への警戒感は募る一方。さらに追い打ちをかけたのが、英国で18年3月に起きたロシアの元情報機関員への神経剤を使った暗殺未遂事件だった。

双方は大規模な外交官追放合戦を展開。米国はプーチン政権に近い大手新興財閥やその経営者まで制裁対象とし、経済的な圧力も強めた。

4期目のプーチン政権は冷戦時代に戻ったかのような荒波の中の船出だが、そのかじ取りを占ううえで注目される論文がある。スルコフ大統領補佐官が先月発表した「混血の孤独(14+)」だ。

論文はロシアがクリミアを併合した14年を境に「西側に向かったロシアの壮大な旅は終わった」と断言。西側文明の一部になり、欧州の人々の「良き家族」になろうしたロシアの再三にわたる不毛な試みは終止符を打つとした。

ロシア史は「タタールのくびき」と呼ばれるモンゴル・タタール支配の一方、ピョートル大帝に象徴される西欧化の流れがある。論文は「ロシアは東に4世紀、続く4世紀は西に向いたが、いずれも根付かなかった」と指摘。前世紀末にはソ連崩壊でロシアが人口、産業、軍事的な潜在力を半減させる屈辱を味わったのに西側は受け入れなかったと述べ、「14年の出来事は必然的だった」と強弁した。

結局「東西の混血の国」のロシアは「百年(あるいは二百か三百年か)に及ぶ地政学的な孤独」の新たな時代を迎えたと主張。「孤独は完全な孤立ではない」が、際限なき開放も不可能とした。ロシアは今後も「貿易をし、投資を呼び込み、知識を交換し、戦う(戦争も交流の一種だ)」などと述べ、大変だが「面白くなる」と結んでいる。

スルコフ氏の論文が関心を呼ぶのは、同氏がプーチン政権を支える影のイデオローグ(理論家)とされているからだ。とくに同氏が掲げた「主権民主主義」論は、強権的な統治体制も民主主義の一種と唱える根拠となった。

「ロシアは千年以上の歴史で幾度も動乱や、つらい試練の時代に直面したが、常に不死鳥フェニックスのようによみがえってきた」。当のプーチン大統領は就任演説でこんな強気の発言もしている。

今回、就任当日にプーチン氏が署名した大統領令は、24年までの包括的な社会・経済政策を示したものに限られ、外交指針はなかった。ロシアが「百年の孤独」を歩むかは別にしても、外交の行方は不透明さを増している。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です