一目均衡「パナマ文書」に市場が揺れる 編集委員 小平龍四郎 2016/04/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡「パナマ文書」に市場が揺れる 編集委員 小平龍四郎」です。





 英国のキャメロン首相が苦境に立っている。亡父が設立したオフショアファンドに自身も投資し、利益を得ていたことを認めたからだ。租税回避の実態を示す「パナマ文書」の流出から数日たっての釈明だ。本人が言うとおり違法性はないのかもしれないが、説明責任を果たす姿勢として、誠実さに欠けるとの批判が高まっている。

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 英首相の指導力を揺るがしかねない「パナマ文書」の騒動に、日本の投資家はもっと目を向けたほうがよいかもしれない。

 あと3日もすれば、欧州連合(EU)にとどまるかどうかを問う国民投票のキャンペーンが英国で正式に始まる。メディアの調査などによれば、残留派と離脱派は拮抗している。残留を訴えるキャメロン首相が国民の信任を失えば、6月23日の投票日に向けて離脱派がにわかに勢いを増す可能性がある。

 問題が起きる前から、キャメロン首相への逆風は強まり始めていた。国民に高い人気を誇るロンドン市長のボリス・ジョンソン氏は、次期首相を狙う思惑もあり、離脱への支持を打ち出している。3月下旬には、やはり離脱を支持する元保守党党首、イアン・ダンカンスミス雇用・年金相が、社会保障費の削減方針を巡る意見の食い違いを理由に辞任した。

 こうした保守党の権力闘争が「内乱」(civil war)といわれるほど激しくなっていたときだけに、後手に回った感の強い「パナマ文書」を巡る説明は、首相にとってはなおさらの痛手となる。投資家が英国のEU離脱を意識すべき理由もここにある。

 EU離脱が選択された場合、何が起きるか。

 米ゴールドマン・サックスが3月初旬のリポートで示した筋書きはこうだ。英政府はEUと貿易などに関する取り決めを新たに結ぶ必要がある。2年程度とされる交渉期間は不透明感がきわめて強くなる。産業界の投資は延期され、英国の経済活動に重大な悪影響を及ぼす――。

 米ブラックロックで投資戦略の対外発信を担当するユーイン・キャメロンワット氏は「影響は英国だけにとどまらない」と訴える。今のところポンド相場を除き、市場は総じて英国のEU離脱の可能性に反応していないように見える。だからこそ「パナマ文書」のような不測の事態が再びもちあがり離脱が決まった場合の驚きは大きく、「世界的なリスクオフは避けられない」。逃避通貨としての円が買われ株安が加速する事態もありうる。

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 経済の面から判断すれば、EU残留は自明の理に思える。けれど、英国にとってはEUから離れ自国の議会だけで物事を決められるようになるという、主権回復の視点も重要なのだ。目先の不利益は主権の回復に必要なコストであり長期ではEU離脱が国益にかなう。ひそかにそう確信する人が英経済界に少なからずいる。市場からは見えにくい英国の断面である。



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