一目均衡 「ピュアプレー」の時代 証券部 川上穣 2 017/9/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡 「ピュアプレー」の時代 証券部 川上穣」です。





 9月12日、ニューヨーク市中心部にある高級ホテル、ピエールで2人のエドが向き合った。

 「2つの偉大な企業が一緒になり、やがて3つの事業に分割される。素晴らしい結果を生むはずだ」

 著名人が集う金融会合で、「物言う株主」といわれるトライアン・パートナーズのエド・ガーデン最高投資責任者が満足げに語った。

 その傍らでダウ・デュポンのエド・ブリーン最高経営責任者(CEO)が応じた。「トライアンの建設的な提案に感謝している」

 9月1日、米ダウ・ケミカルと米デュポンが統合し、世界最大の総合化学グループ「ダウ・デュポン」が生まれた。巨大化が目的ではない。農業・素材・特殊素材に分割し、それぞれが独立企業として上場を目指すことが最大の狙いだ。

 「官僚主義がはびこる持ち株会社を打破し、グローバルな事業部門が権限を握るべきだ」。トライアンは統合交渉で主張し続けた。大胆な3分割は株主の意向を反映したものでもある。

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 「コングロマリット(複合企業)の時代は終わった」。スウェーデンの投資会社セビアン・キャピタルの創業者は最近、英フィナンシャル・タイムズ紙にこう語った。今後5~7年の間にM&A(合併・買収)市場で起きるのは「脱・合併だ」とする。

 相乗効果の薄い事業を抱えていては経営資源が分散され、企業価値が高まらない。株主に突き動かされ、欧米企業は単一事業で勝負する「ピュアプレー」にカジを切ろうとしている。

 欧州ではデンマークの海運複合企業A・P・モラー・マースクが石油部門を仏トタルに売却すると8月に発表した。コンテナなど船舶事業に集中する。医療や産業機械に力を入れてきた独シーメンスですら「最後に明かりを消す複合企業にはならない」(ジョー・ケーザー社長)と、さらなる変革への意志を示す。

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 なぜ今、選択と集中のうねりが起きているのか。

 外資系投資銀行の首脳は「機関投資家が上場投資信託(ETF)という手段を得たのが大きい」と解説する。かつては米ゼネラル・エレクトリック(GE)のような複合企業への投資を通じて、分散投資の効果を得ることが多かった。

 だが、各国の株式や債券を自在に組み入れるETFがあれば、分散投資は容易になる。一方で企業には強みのある単一事業への特化を求め、市場平均を上回る超過収益の源泉にするようになった。

 日本では、東芝が半導体メモリー事業の売却先に日米韓連合を選んだばかり。苦肉の策としての事業切り出しが、アップルなど有力な米IT(情報技術)企業の資金拠出を促した。

 4月には、事業の切り出しを後押しする「スピンオフ税制」が国内で導入された。海外の物言う株主たちが日本企業への関心を高めているとの声も聞かれる。ピュアプレーの時代が日本でも来るのか。



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