一目均衡 「灰色のサイ」を手なずけよ 証券部 土居 倫之 2017/11/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡 「灰色のサイ」を手なずけよ 証券部 土居倫之」です。





 2008年のリーマン・ショック後、「ブラックスワン(黒い白鳥)」という例えが金融・資本市場で盛んに言われた。成長と金融緩和が併存する「ゴルディロックス(適温)相場」が広がる今、市場では「灰色のサイ」が意識されている。

 ブラックスワンは確率は低いが、起きたときには市場に甚大な影響を及ぼすリスクのこと。黒い白鳥はめったに現れないことに由来する。

 一方、灰色のサイは、高い確率で存在し、大きな問題を引き起こすにもかかわらず軽視されがちな問題を指す。サイは灰色が普通で、普段はおとなしい。だが暴走し始めると誰も手を付けられなくなる。米国の作家、ミシェル・ワッカー氏が著書「グレー・リノ(灰色のサイ)」で示した。

 世界の金融当局者で灰色のサイに触れたのは、おそらく中国が初めてだろう。「ブラックスワンの出現だけではなく、灰色のサイのリスクも防がなければならない」。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は4日、こんなメッセージを出した。

 周氏が考える中国の灰色のサイは、高成長の代償として積み上がった膨大な民間債務だ。国際通貨基金によると、金融を除いた中国の民間債務の国内総生産比率は2016年に235%、22年には290%に達する見通し。その水準の高さは中国経済崩壊論の論拠のひとつとされ、当事者で退任を間近に控える周氏も強い警告を発する。

 灰色のサイは世界のあちこちにいる。日本の場合は人口減少・少子高齢化だ。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、40年の日本の総人口は1億1000万人、65年には8800万人となる。うち38%に当たる3380万人が65歳以上の高齢者だ。医療費や年金など社会保障費用の急増や経済成長率の一段の低下は免れない。人口減社会は静かに訪れるが、ひずみは一気に噴き出す。

 欧米では、所得格差の拡大や固定に対する国民の反感がポピュリズム(大衆迎合主義)を招いた。

 中国の習近平(シー・ジンピン)総書記は党大会で確固たる権力基盤を確立した。日本では安倍晋三首相が10月22日の衆院選で圧勝し、政治基盤を固めた。

 安倍氏を「先進国で最も強い政治リーダー」と評価する米ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は、「安倍首相は人口減少に対処するために移民の受け入れという政策を決断すべきだ」と提言する。

 日経平均株価は約26年ぶりの高値水準に上昇してきた。世界の投資マネーが業績が好調な日本株になだれ込んでいる。突発的なリスクとして考えられるのは北朝鮮問題ぐらいだろう。

 だが適温相場は「ぬるま湯」と同義だ。せっかく強い権限を持ったリーダーが現れても、その心地よさが灰色のサイという構造問題の解決を先送りさせるインセンティブ(誘因)になりかねない。



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