一目均衡 「破壊者」が消える市場 米州総局 山下晃 2017/11/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡 「破壊者」が消える市場 米州総局 山下晃」です。





 今年6月、米アマゾン・ドット・コムが生鮮小売りホールフーズ・マーケットの買収を発表すると、世界中の生鮮食品を扱う小売り株が一斉に売られた。

 アマゾンに買収を助言した米金融大手ゴールドマン・サックスの投資部門責任者、グレッグ・レムカウ氏が、こんな小話を披露してくれた。

 「アマゾンが入ってきたらすぐ逃げろ。そのビジネスは崩壊する」

 落ちはこう続く。「だけどアマゾンが狙わないなら逃げ出した方がいい。そのビジネスは、もうからないに違いないからだ」

 アマゾンにアップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、フェイスブックを加えたIT(情報技術)の「ビッグ5」の株価は、破竹の勢いを続けている。

 IT5社合計の時価総額は、2017年に入って1兆ドル(約113兆円)増えた。主要500社合計の増加額は2.8兆ドルだから、5社だけで3分の1を占める。

 これと裏腹に、ゼネラル・エレクトリックやIBMといったかつての代表銘柄はさえない。企業や産業の新陳代謝が経済と株価をけん引する米国のダイナミズムは、なお健在のようにみえる。

 だが目を凝らすと不安の種もある。一つは、IT企業の新規株式公開が低調なことだ。

 米データトレック・リサーチによると、17年1~9月に米国で株式を新たに上場したIT企業は15社。アマゾンがサービスを始めた95年から2000年までは年平均で200社超あったのに、15年は35社、16年は25社と新顔の登場ペースは年々鈍っている。

 背景には長引く低金利とカネ余りがある。行き場をなくした投資マネーは未公開株市場へ流れ込み、企業はわざわざ上場しなくても事業資金を集めやすくなった。クラウドサービスなどの技術の進化で、事業を軌道に乗せるまでのコストが小さくなった面もある。

 また、成長のために市場を使いこなそうとする意欲が企業に薄れているようにも見える。

 音楽配信のスポティファイは新株発行も売り出しもせずに新規上場する「ダイレクトリスティング」を検討し、民泊仲介のエアビーアンドビーも同じ手法を研究しているという。

 これがまかり通れば、株式市場は創業者らの初期投資を回収するだけの場となり、投資家から広く集めたお金を成長のエンジンに変える機能は弱まる。

 もしアマゾンをはじめとするビッグ5が未上場だったら、米市場はビジネスモデルの行き詰まった企業ばかりとなり、今の活況はなかっただろう。

 データトレック創業者で、長く投資分析に携わるニック・コラス氏はこう警告する。「投資家が常に探しているのはディスラプター(創造的破壊者)だ。それが市場の外側だけに存在するのなら、株価には悪い影響しか残らない」



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