一目均衡 「競争戦略」とは何か 編集委員 西條 都夫 2017/1/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡 「競争戦略」とは何か 編集委員 西條 都夫」です。





 経営者の口から「事業戦略」とか「競争戦略」という言葉をよく聞くが、それが何を意味するのか判然としないケースが少なくない。例えば中期計画で掲げる3年後の売上高や利益の数字は目標であって、それ自体は戦略ではない。何かといえば組織改革に走る会社も多いが、これも目標を達成する手段であって、戦略とは呼べない。

 では戦略とは何だろう。私見ではその会社ならではの「価値ある独自性」の追求である。横並びから脱却し、他では提供できない価値を顧客に届けることだ。それが収益力の源泉にもなり、社会貢献にもなる。

 こうしたユニークさを実現する手立ては、技術であったり、効率的なサプライチェーンであったり、時間をかけて育んだブランド力であったり、いろいろな道筋がある。だが最終的な目的地は独自性の確立であり、その実現に向けた青写真を描き、旗を振るのが経営の役目にほかならない。

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 例えばベビー用品大手のピジョンを見てみよう。同社の売上高は1千億円に満たないが、営業利益率は15%を超え、日本のメーカーとしては例外的な高収益体質を構築した。何が原動力になったのか。山下茂社長は「生後18カ月までの赤ちゃんに的を絞ったことだ」という。この年齢の赤ちゃんの哺乳に関わる事項は世界共通であり、「いい哺乳器」を開発できれば、国籍を問わず通用する。

 現に母国市場の日本が少子化で赤ちゃんの数が減っているなかでも、海外事業を大きく伸ばし、過去5年で全社の売上高を1.5倍に増やした。独自の授乳セオリーに基づいた人口乳首がヒットしたほか、戦略市場の中国では各地の有力病院と提携し、院内に「育児相談室」を展開することで、強いブランド力と流通網を確立した。

 見逃せないのは、「何をするか」が明確になれば、「何をしないか」もはっきりすることだ。ベビー服は哺乳器よりはるかに市場規模が大きいが、技術による差別化が難しく、かつ市場ごとに消費者の好みが違うので、参入しない。もっとも山下社長は「最初から明確な戦略があったわけではない。様々な失敗を経て、今がある。今後も試行錯誤は続くだろう」という。

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 もう一つの例は「工場のアマゾン・ドット・コム」の異名を持つミスミグループ本社だ。同社のサイトを訪ねると、金型部品や計測機器、軍手まで工場で必要なモノなら何でもそろい、寸法違いまで含めると取扱品目は何と800垓(がい、1垓は1兆の1億倍)点にのぼるという。

 これだけ多数の品目を注文に応じて素早く届けるサプライチェーンを整えることで、簡単にマネのできない競争優位を築きあげた。同社が中間流通という本来なら利の薄い業態から出発しながら、営業利益率が常に10%を超えているのも、戦略の勝利といえる。

 さて読者の皆さん、あなたの会社に「価値ある独自性」は存在しますか。



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