一目均衡 リスクマネーはどこに 編集委員 西條都夫 2013/11/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資・財務面にある「一目均衡 リスクマネーはどこに 編集委員 西條都夫」です。





 アベノミクスの初期の成功もあって、景気は好調を持続し、企業収益も改善した。だが、表に見える数字はともかくとして、日本経済の実力は本当に上がったのか。新たな価値の創造に向けて、産業の構造転換は進むのだろうか。

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 例えば日米の企業社会をざっくり比較すると、伝統的な産業では日本が踏ん張っているが、新産業では米国に圧倒されている現実がある。前者は自動車に代表される製造業、後者の代表は新たな企業が次々に登場するIT産業である。

 米シリコンバレー在住のベンチャー投資家、伊佐山元さんによると、「フェイスブックやツイッターなど1995年以降に創業した米IT有力10社の株式時価総額は円換算で計100兆円近くに達した」という。一方トヨタ自動車やメガバンクで構成する日本の上位10社は90兆円に届かない。

 わずか20年足らずで、日本の大企業群にゆうに匹敵する新産業がゼロから立ち上がったのだ。

 日米の起業格差を生む理由は国民性から移民の多寡までいろいろあるが、大きな理由の一つはリスクマネーの厚みである。

 昨年4月に創業し、JR渋谷駅近くのアパートの一室に本社を置くベンチャー企業の「エイス」。一般の主婦や学生からネットでアイデアを募り、それを企業に橋渡しして商品開発につなげる会社だ。

 創業者の一人で、代表取締役の山田歩さん(25)は「創業資金は経済産業省からの1300万円の助成金を充てた。来年1月には2回目の調達を実施し、ベンチャー投資会社から3000万~5000万円を確保する」という。

 日本のベンチャーとしては順調な船出といえるが、米国はケタが違う。エイスにとって先行モデルでもあるクワーキーという会社がニューヨークにあり、同社は創業から4年間でおよそ90億円を調達した。「クワーキーに負けないよう頑張りたいが、おカネの面では勝負にならない」と山田さんは打ち明ける。

 日本発のマネーも外に向かいがち、という悲しい現実もある。武田薬品工業の長谷川閑史社長は「過去7~8年で武田を含めて日本の製薬大手は2兆円以上を創薬ベンチャーに投資した」というが、ほとんどは米国などの海外ベンチャーが対象だ。いい投資先がないからマネーが逃げるのか、資金がないから起業家が育たないのか、「鶏と卵」級の難問だが、現状を何とか打開する必要がある。

 「戦後の日本にはリスクマネーが潤沢にあった」という逆説がある。護送船団に守られた銀行は多少の投融資に失敗してもつぶれる心配がない。そこで思い切った産業資金の供給が可能になり、それが高度成長を支えたという見方である。

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 今さら護送船団の昔に逆戻りもできないが、リスクマネーの流れを太く大きくするには、公的年金資金の一部をベンチャー投資に振り向けるなど政府の役割や判断もカギを握るはずだ。



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