一目均衡 中国、L字回復のジレンマ 上海支局 張 勇祥 2016/05/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡 中国、L字回復のジレンマ 上海支局 張 勇祥」です。





 「大学を誘致し、快適な住宅や商業施設が集まる新しい街を造る」。一辺あたり4、5メートルもある巨大な模型には、マンションなどのミニチュアがびっしりと置かれていた。スクリーンからはドラの音とともに「モダンなアーバンライフ」のイメージ映像が流れる。

マンションなどのミニチュアがびっしりと並ぶ「双福新区」の開発計画を示す模型

 中国西部の大都市、重慶。中心部から車で30分ほど離れた新市街地「双福新区」の開発計画を説明する李勇主任の言葉には力がこもっていた。安価な住宅を多く建設した成果で農村からの移住者が相次ぎ、消費を押し上げているという。

 大規模開発の財源のカラクリを探ると「重慶市双福建設開発」という会社にたどり着く。地方政府が間接的に全株式を保有し資金調達やインフラ投資の受け皿になる「地方融資平台」と呼ばれる一社だ。

 この融資平台は今年に入り社債の発行を再開した。目論見書には保有する土地の一覧が載る。銀行融資ではない、迂回した資金調達――シャドーバンキングが息を吹き返しつつある。

 背景には景気がなかなか上向かないという現状がある。共産党の機関紙、人民日報が9日に掲載した「権威人士」へのインタビューでは「経済は(回復が緩やかな)L字」「バラマキで経済にカンフル剤を打つのは避けるべきだ」と強調した。だが、地方政府の役人にしてみれば景気が失速してしまっては出世に響く。

 構造改革は不可欠だが、景気は公共投資を積み増さなければ現状を維持できないほど弱い。政府や国有企業のバランスシートを拡大し、問題を先送りするのが最も無難だ。L字回復のジレンマと官僚の無作為が中国を覆っている。

 昨年6月の高値からの下落率が5割近い中国の株式市場でも同様だ。バブル崩壊に慌てた当局は証券会社幹部を拘束し、信用取引を規制し、公的資金を導入して相場を下支えした。株式需給の悪化を恐れ、新規株式公開(IPO)は前年の半分以下に絞り込んだ。

 上海総合指数は5月中旬以降、ほとんどの期間を2800台前半で推移する。時折2700台に下がると午後の取引で買いが入り、値を戻す。買われるのは時価総額が大きく指数への影響が強い銀行、保険株が多い。介入の影がちらつく。

 株価形成を市場メカニズムに委ねるのではなく安易な介入を繰り返した結果、投資家は姿を消した。27日の上海市場の売買代金は1200億元台にとどまり、2015年6月のピーク(1兆3117億元)の10分の1に落ち込んだ。実体経済と異なり、株式市場では副作用がすぐに表れる。

 「MSCIが人民元建てA株を指数に採用した際に買われるのはどこか」「海外上場の中国企業が本土市場に復帰する場合、裏口上場を目指すことが多いが、逆さ合併の対象として買われる『ハコ企業』は」。辛うじて市場に残る投資家たちの口の端に上るのはこういった話題ばかり。中国の株式市場が信頼を取り戻す道筋は見えないままだ。



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