一目均衡 中国から資本が逃げる ドル高・人民元安の先に 2016/12/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡 中国から資本が逃げる ドル高・人民元安の先に」です。





 10月1日の国慶節(建国記念日)。重慶市の40代男性は家族で香港に飛び立った。妻子をホテルのプールに残し、向かった先はIFAと呼ばれる金融アドバイザーの事務所。休暇を兼ね、外貨建て保険を購入するのが目的だった。

 複数の保険を吟味し、大手AIAの保険に決めた。年3万元(50万円)相当を積み立てていく。「高利回りが見込めるため」と男性は語るが、もちろん別の狙いがある。資産の海外移転だ。保険を買う形なので、年間5万ドル(590万円)という両替制限には該当しない。銀聯カードで支払える手軽さも魅力だった。

 人民元は2016年、ドルに対し6%強も値下がりした。下落率は元切り下げがあった15年より大きい。通貨当局は海外送金などの規制を断続的に打ち出したが、思惑とは逆に市場の元安予想はかえって強まった。「ドルの現金がなく、ご希望の額すべては両替できません」。数千ドルの両替で銀行窓口にこのような対応を受ければ、だれだって不安になるのは当然だ。

 結果、中国である程度の資産を持つ層はいま、様々な手段で資金を海外に逃がそうとしている。ビットコインを使った流出も勢いを増している。トランプ氏が米大統領選に勝利した11月はドル高・元安が進む裏で、ビットコインの取引が過去最高に膨らんだ。うち9割を占めたのが中国だ。

 「1日の送金上限は200ビットコインです」。北京の大手ビットコイン取引所の担当者は事もなげに話す。足元のビットコイン価格は790ドル前後。15万ドルを超す金額をやすやすと移転できる計算だ。「ハンドキャリーは有効」「地下銀行も健在」。ネットでは流出ルートを探る記事も目につくようになった。

 12月、ドラや鐘が響く中で始まった香港と深?の相互取引も振るわない。深?株の取引は1日あたり20億元ほど。エアコン最大手の格力電器、東芝の白物家電買収で名をはせた美的集団が名を連ねる割には寂しい数字だ。「元安や資本流出への懸念がくすぶる中では手掛けにくい」。香港のファンドマネジャーは話す。

 場当たりな金融行政を繰り返す中国への不信感も強い。15年の株バブルの崩壊以降、当局は「国家隊」と呼ばれる政府系資金を動員して買い支えに奔走した。上海総合指数が3000を上回ったところで落ち着くと、今度は次なるバブルの抑制策に着手した。不動産への投資規制を受け、資金が改めて株式に流れ込むのを恐れているのだ。

 今は複数の保険会社がやり玉に挙がり、特定銘柄の買い占めで株価をつり上げたなどと糾弾している。相場を安定させることだけに気を取られ、自由な株価形成のもとで銘柄選別や資金調達の場を提供するとの意識は失われている。

 15日には国債先物が初めてストップ安をつけた。中国は今、資本逃避に歯止めがかからなくなっている現実を受け止める時期に差し掛かっている。

(上海支局 張勇祥)



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