一目均衡 幻と化す欧州資本市場統合 欧州総局 黄田和宏 2016/06/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡 幻と化す欧州資本市場統合 欧州総局 黄田和宏」です。





 英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた翌25日、EUの執行機関である欧州委員会で英国代表を務めたジョナサン・ヒル氏が静かに辞表を提出した。受理したユンケル欧州委員長はヒル氏を「真の欧州人」と評し、辞任をおしんだ。欧州の資本市場を米国並みに発展させることを目指した資本市場同盟(CMU)の旗振り役として尽力してきたヒル氏の退任で、欧州の資本市場統合の夢は幻と消えつつある。

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 CMUは雇用や成長、投資を促すための欧州委の優先戦略の要のひとつとして、2015年9月に行動計画に移行した。ヒル氏は今月、ブリュッセルでの会議で「CMUはいいスタートを切ったが、これは始まりにすぎない。私はペースを緩めないことを固く決心している」と述べ、市場統合にまい進する考えを示していた。ところが、英国のEU離脱でこれまでの努力は台無しになった。

 英国のEU離脱は、欧州の資本市場に厳しい現実を突きつけている。英シンクタンク、ニュー・フィナンシャルによると、英国を除くEU27カ国の資本市場を活用した資金調達のうち、英国で調達している割合は78%に達する。英国はこれらの資金調達の場としての地位を失うリスクがある一方、欧州企業は英国以外で新たな調達方法を探す必要に迫られている。

 すでに離脱問題は欧州資本市場の機能をむしばんでいる。1~6月の英企業の新規株式公開による調達額は45億ドルで、前年同期比4割減、欧州全体では5割以上も落ち込んだ。国民投票前の4月中旬には、200を超す英国起業家が連名で「EUを離脱すれば、事業を始め、技術を革新し、成長するのを阻害する」と警告していたが、こうした懸念が現実になりつつある。

 資本市場の担い手である取引所にも、大きな影響を及ぼす恐れがある。ドイツ取引所とロンドン証券取引所グループの経営統合の行方に懸念が広がっているためだ。ドイツ取引所による再三の買収提案を受けて、今年3月に16年越しの合意にこぎ着けた両社の統合は、CMUが目指す市場統合の象徴だった。

 金融機関の中には、欧州の金融センターであるロンドンからダブリンやフランクフルトなどに一部機能を移す検討を始めているところもあるが、英国が長年培ってきた資本市場の媒介役としての投資銀行機能を移転するのは容易ではない。ドイツ銀行の最高経営責任者で英国人のジョン・クライアン氏は独紙ハンデルスブラットに「金融センターは死なないが、次第に弱くなるだろう」と話した。

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 このまま手をこまぬいていれば、英国に待っているのは衰退だけだ。ドイツやフランスなどには金融機能を強化するチャンスだが、英国の機能を全て代替するのは難しい。世界的に金融市場の統合が進む中で、流れに逆行し「分断」を選んだ欧州の資本市場。英国の存在感の低下が欧州全体にも暗い影を落としている。



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