一目均衡 ROE革命の第2幕 証券部 松崎雄典 2015/07/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「一目均衡 ROE革命の第2幕 証券部 松崎雄典」です。





 「8%じゃ足りないんです」。短期人材紹介のフルキャストホールディングスで経理財務部長を務める朝武康臣氏は、社内にこう訴えている。自己資本利益率(ROE)のことだ。

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 ROEの目標値に8%が浸透している。企業と投資家の望ましい関係について一橋大学大学院の伊藤邦雄特任教授が2014年にとりまとめた報告書(伊藤レポート)が求めているためだ。株式の「資本コスト」を上回る水準とされる。

 株式を買うなら値上がりや配当でこの程度は欲しいと投資家が考える利回りを「資本コスト」という。一般に長期金利に株式のリスクプレミアムを上乗せして算出され、株価の動きが荒いと高くなる。

 フルキャストは自社の資本コストを13%とはじき、ROE20%を目標に置く。日雇い派遣からの撤退などを経て2年前に復配したばかり。創業者など大株主が株式の過半を持ち流動性も低い。株価の動きが荒く、資本コストが高くなっており、ROE8%では企業価値を毀損してしまうのだ。

 そこで資本コストの引き下げと成長の両方を目指す方策を打ち出した。総還元性向は50%にして資本の増加を抑える。銀行借り入れで資金調達しながら業績を拡大し、時価総額を増やして値動きを安定させる。

 決算短信に記す「経営の基本方針」も変更した。「すべてのステークホルダーの視点に立った経営施策を実施」は「資本コストを上回るROEを実現」にした。「財務戦略と成長を首尾一貫して見通すことで社長とも意思疎通がしやすくなった」。朝武氏は語る。

 ROEを目標とする企業は一気に広がった。今、静かなうねりになってきたのが資本コストへの意識だ。

 野村証券の金融工学研究センターは、事業特性や株価の動きから顧客企業の資本コストを算出している。太田洋子センター長は、「地方のスーパーマーケットを運営する企業からも依頼が来る」と変化に驚く。

 いち早くROE経営に取り組んできたエーザイは一歩先を行く。6月に最高財務責任者(CFO)に就任した柳良平常務執行役は「新CFOポリシー」をまとめ、経営陣らに配布した。

 30ページに及ぶ資料の中核が「エクイティ・スプレッド(ES)」という概念だ。ROEが資本コストをどれほど上回るかを示し、プラスだと株主に価値を生む。

 ESをプラスにするため、事業や地域ごとに200種類もの投資収益率を求めている。新興国でのベンチャー投資なら25%、工場建設なら15%といった具合だ。事業の担当者はこのレートに基づいて収益性を試算し、柳CFOに稟議(りんぎ)書を回す仕組みだ。

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 日本のROE重視の流れが一過性ではと疑う海外投資家も多い。最大の理由は、資本コストへの意識が不十分なためだ。費用がわかってようやく目指すべき売上高が見えてくるように、資本コストの議論が高まれば、地に足の着いたROE経営に発展していく。



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