世界で税収奪い合い 企業誘致へ税率下げ競う 2017/9/3 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「世界で税収奪い合い 企業誘致へ税率下げ競う 」です。





 企業の法人税の負担が下がっている。世界の上場企業が世界中で支払った税金が連結ベースの税引き前利益に占める比率を示す税負担率は、10年前の27.8%から24.6%に低下した。節税を狙いグローバル企業が税率の低い国に拠点を移す動きが加速し、税負担率が全体として下がった。企業をつなぎ留めようと各国が税率の引き下げを競う中、日米企業の負担率が相対的に高くなっている。税収の不均衡を正すために国際協調が不可欠になっている。

 企業の税負担を示す一般的な指標である法人実効税率は各国が定めた課税所得に対する税率だ。これに対し企業の税負担率は連結決算の税引き前利益に対する会計上の税金の比率を示す。本社を置く国の税率が高くても税率の低い国で事業を営み拠点を増やせば全体として企業の税負担率が下がっていく。

 日本経済新聞がQUICK・ファクトセットのデータから集計したところ世界の上場企業の税負担率は10年前から3ポイント低下した。1ポイント下がると990億ドル(11兆円)税収が減る計算だ。

 企業の税負担率が下がったのは、国家間の税率の引き下げ競争の影響が大きい。法人実効税率を比べると日本は第2次安倍政権発足後に36.99%から29.97%に低下した。英国は19%と10年で11ポイント引き下げた。

 税率の引き下げは自国企業の競争力を高めるためだが、低税率の国では外国から企業を誘致して税収を増やす狙いもある。メキシコは税優遇で米国向けに自動車などを製造する企業を誘致し、法人税収は2015年までの10年で4倍に増えた。税率を先進国最低水準の12.5%まで下げたアイルランドは欧米の銀行や米IT(情報技術)企業が拠点を移し、15年の法人税収は69億ユーロと過去最高を更新した。

 日本やドイツは15年の税収が07年を下回り、米国もようやく回復したばかりだ。国ごとに税収の伸びに格差が広がる。

 企業から見ると日本の税負担率は外国企業に比べなお高い。16年度は32%と10年前より10ポイント下がったが主要国で最高の負担率だ。日本と並ぶのは2ポイント下がり32%になった米国になる。

 「米国は仏独にも日本にもメキシコにも後れを取っている。理想を言えば税率を15%まで下げたい」。8月30日、トランプ米大統領は税制改革について演説し法人減税の必要性を訴えた。米議会の中からも「海外勢と競争する米企業は懲罰を科されている」(共和党のライアン下院議長)との声が上がる。

 焦る政府を尻目に米国のIT企業などは低税率の国・地域を使った節税策が盛んだ。米マイクロソフトは業務ソフト「オフィス」などをアイルランドやプエルトリコから販売する。米アップルは通信技術やデザインの研究開発費を米国とアイルランドで負担し、課税所得も両国で分配する。この結果、米企業の税負担率は米国の実効税率(39%)よりも低くなった。

 株式の時価総額上位30社を税負担率の低下幅でランキングすると、首位のマイクロソフトは税負担率を15.0%と10年前の半分以下に引き下げた。アマゾン・ドット・コムなど米IT大手が軒並み上位に並ぶ。

 みずほ総合研究所の高田創氏は「企業が自由に税金を払う国を選ぶ中、従来の制度では課税すべき利益を捉えられなくなっている」と指摘する。産業のIT化が進み、技術やデータなど知的財産から生じた利益や必要経費がどの国で発生したのか分けるのが難しくなっている。

 税の不均衡を正そうとする試みも出てきた。経済協力開発機構(OECD)は15年に情報の共有や国際課税ルールを見直す行動計画を策定。企業がグループ内でどんな取引をし、どこで税を負担したのか国別に報告書を作成するよう求めた。行き過ぎた節税や税の奪い合いに歯止めをかける狙いだ。

 国際税務に詳しいKPMG税理士法人の角田伸広氏は「税収を国が奪い合うのではなく、企業の稼ぎを世界経済の拡大に生かす工夫が必要だ」と話している。(富田美緒、中村亮)



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