世界に保護主義の脅威IMFチーフエコノミストに聞く、企業進出計画に 悪影響も 2017/5/4 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「世界に保護主義の脅威IMFチーフエコノミストに聞く、企業進出計画に悪影響も」です。





 国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏は日本経済新聞の取材で「世界経済は上向いているが、保護主義の脅威を抱えたままだ」と警戒感をのぞかせた。日本経済は、賃金の引き上げや移民の受け入れなど政策課題が残っていると指摘しつつ、金融緩和などデフレ脱却に向けた取り組みを評価した。

モーリス・オブストフェルド氏

 ――IMFは世界の経済成長率見通しを上方修正しました。

 「2017年の成長率見通しは、1月時点に予測した3.4%から4月に3.5%へと引き上げた。18年は3.6%成長へとさらに少し上向くとみる。日本や中国、欧州の底堅さがその要因だ。米経済も17年1~3月期の成長率こそやや弱含みの兆しがあるが、17~18年は全体のけん引役になると織り込んでいる」

 ――日本は輸出の増勢で17年に1.2%成長を見込んでいます。

 「日本の強さはやや驚きだった。上方修正の一部は国内総生産(GDP)統計の見直しによる影響はあるが、女性の労働参加率は米国よりも高く、『第3の矢』としてきた構造改革にも進展がある。物価上昇率は日銀が目指す2%に届かないものの一時は1%前後まで高まり、デフレ脱却に向けて環境は改善している」

 ――とはいえ日本が低成長・低インフレから脱したとはいえません。

 「日本は産業のダイナミズムを欠いており、技術革新が起きにくく、起業もしにくい環境だ。日本は人口減少という極めて厳しい逆風にも直面している。一定の移民受け入れは経済にとって極めて有効だろう」

 ――そもそも日本は完全雇用なのになぜ物価が上がらないのでしょう。

 「そこは実に不思議なところだ。まず20年以上も物価が上がらない状況にあるため、人々のインフレ心理が簡単には上向かない。IMFは政府主導の積極的な『賃上げ政策』を日本に提案している。消費税を小幅に段階的に上げ、財政改善とインフレ心理の引き上げを両立する政策も勧めている」

 ――トランプ米政権が目指す高成長路線は実現するでしょうか。

 「18年の米経済は2.5%の成長を見込んでおり、財政刺激によって潜在成長率を上回る伸びになる。IMFは17年中にある程度の財政刺激策が実行されるという前提で予測を立てている」

 「税収中立を実現した上で雇用や投資を促し、さらにインフレ圧力も高まらずドル高にもつながらない施策を期待している。ただ『(輸出を免税して輸入課税を強化する)法人税の国境調整』で税収中立を目指そうとすれば、ドル高となるだろう」

 ――米欧を中心に保護貿易主義への懸念も強まっています。

 「08年以降、各国・地域で3000ほどの保護主義的な貿易制限措置が採用された。世界経済は金融危機後の成長鈍化が懸念されているが、その理由の一つが『スロー・トレード(貿易の減速)』だろう。貿易制限措置は実際に貿易を減速させるだけでなく、企業の海外進出計画などにも悪影響がある。技術移転が損なわれて世界的に生産性の上昇が妨げられ、それが成長鈍化につながる悪循環を引き起こす。世界経済は回復傾向にあるものの、保護主義という脅威を抱えたままだ」

(聞き手はワシントン

=河浪武史)



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