中印「一帯一路」巡り摩擦 国境地帯で1カ月にらみ合い 2017/7/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「中印「一帯一路」巡り摩擦 国境地帯で1カ月にらみ合い」です。





 【ニューデリー=黒沼勇史、北京=永井央紀】インド陸軍と中国の人民解放軍が6月半ばから、国境地帯で対峙を続けている。交戦はまだないもようだが、それぞれ相手側の「越境」を非難している。これまでも国境で対立してきた両国だが、対峙が1カ月を超えるのは異例。長引く背景には中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」を巡る対立があり、インド洋での摩擦も激しさを増す。

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「あなたは国境を越えた、引き返してください」と書いた横断幕を掲げる中国人民解放軍の兵士=AP

 インド側の説明によると、両国の軍隊が対峙するのはインドが防衛協力するブータンの西部のドクラム高原。領有権争いは未決着だが、1990年代までのブータン・中国間の合意文書で現状維持を確認した区域だ。一方、中国側はインド軍が中印境界を越えて中国領に入ったと主張する。

 インド関係者によると、インド軍はブータン国内に1千~1500人が駐屯し、隣接するインド北東部に1万2千人以上を配備。一方、人民解放軍については、ドクラム高原内外で5千人前後と推定するものの、中国領内で控える後方支援部隊の規模は不明という。

 ブータン外務省によると、今回の摩擦は「6月16日に中国陸軍がドクラム地区で自動車走行が可能な道路建設を始めた」ことがきっかけ。インド外務省も「一方的に3カ国国境を決めるいかなる取り組みも(2012年の中印)合意に対する違反だ」と非難した。

 これに対し中国外務省の報道官は記者会見で写真をかざして反論。「インドはブータン保護を隠れみのにして境界を越えた」とも強調し、一歩も引かない構えを見せた。

 中国軍の道路建設は止まったもようだが、にらみ合いは4週間以上続く。インド陸軍が人民解放軍から120メートルの距離に設営したとの情報もあり、小規模な戦闘は一触即発との見方も強まる。

 中国がドクラム高原を支配すると、インドはミャンマーとバングラデシュに挟まれた北東部7州と本土を結ぶ陸路を遮断されるリスクが高まる。

 中国がインドへの反発を強めるきっかけとなったのは、習近平国家主席肝煎りの構想「一帯一路」に関する5月の国際会議だ。インドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方が、同構想の関連事業の対象地になっていることに反発したインドは代表団の派遣を拒否。習氏の顔に泥を塗られた中国は反発した。

 人民解放軍はこれまでもカシミール地方などインド領に侵入し道路建設の構えを見せた。だが、昨年まで駐中インド大使だったアショク・カンタ氏は取材に対し、中国側が「インド軍の撤退が対話の前提条件」として外交解決の糸口さえ与えない点で「従来と全く異なる」と指摘する。「人工島に滑走路を設け実効支配の既成事実を作る、南シナ海での動きと極めて似ている」とも語る。

 ▼中国とインドの関係 中国の人民解放軍が1951年、チベット・ラサに進駐し59年の「チベット動乱」を武力で鎮圧するとインドと中国の国境を巡る緊張関係が高まった。後にノーベル平和賞を受賞するダライ・ラマ14世はインドに亡命政府を樹立している。米ソのキューバ危機が起きた62年には中印国境紛争が勃発。インドはカシミール地方などで支配地の一部を失っている。

 領土や安全保障を巡る摩擦が続く一方、経済の交流は活発になってきた。最近は中国の携帯電話メーカーのインド進出や自動車大手によるインド生産の発表が相次ぐ。中国企業はインド市場を有望視し、インド側も製造業の強化や雇用の創出につながると期待する。



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