中国、国産空母の死角 2018/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「中国、国産空母の死角」です。





中国が初の国産空母「001A型」の航行試験を開始した。同空母は早ければ2019年にも正式に就役し、旧ソ連製を改造した「遼寧」と合わせ2隻体制となる。国家の威信をかけた空母の建設がなおも続くが、そこには「死角」もある。

(画像:大連港から試験航海に出る中国の空母「001A型」=ロイター)

5月13日に大連港を出て黄海で6日間にわたり最初の航行試験をした001A型は、全長315メートル、満載排水量約5万トンで戦闘機は30機程度搭載できるようだ。米海軍が10隻運用する原子力空母ニミッツ級(333メートル、約10万トン、60機程度)に比べやや細身な空母だ。

30年来の悲願

「今世紀半ばまでに中国軍を世界一流の軍隊にするよう努める」――。2017年10月の共産党全国代表大会で習近平(シー・ジンピン)国家主席はこう強調した。政権にとって、空母は「世界一流の軍隊」の象徴であり、保有は30年以上前からの悲願だった。

中国軍がオーストラリア軍の廃棄した空母を鉄くず名目で買って研究に着手したのが1985年。その後、旧ソ連製空母のスクラップを3つ入手し研究を続行。3つ目は改造して「遼寧」と命名し、運用実験に供している。これを複製したのが今回の001A型だ。

空母にはさまざまな用途がある。第一に、本国から離れた海域に空母を派遣し軍事作戦をする「戦力投射」だ。さらに、大規模災害対処など「平時の活用」や、敵対国を威圧する「心理戦の道具」という使い道もある。

ただ戦力投射に限って言えば、中国軍の空母は米空母には遠く及ばない。米空母は巡洋艦や攻撃型原子力潜水艦などと「空母打撃群(CSG)」を組む。打撃群の運用には艦隊の組み方やデータ共有など独特の技が求められ、米海軍関係者は「一つの国がこれを習得するには100年はかかる」と自信ありげに語る。

米海軍は、搭載武器を含めて重さが20トン以上にもなるジェット戦闘機を短い飛行甲板からのべ何千回も打ち出せる「カタパルト」を保有する。未保有の中国軍は、搭載武器を減らしたうえで戦闘機を「スキージャンプ台」と呼ばれる飛行甲板から離陸させている。

時代遅れの懸念

戦闘機自体も現在はステルス性能のない「第4世代」機なので、仮にこの先、米中の空母部隊が激突しても、中国軍機は「第5世代」の米軍機に撃ち落とされてしまう。

それでも中国軍は空母の量産や改良を重ね、今後十数年をかけて原子力型を含め5~6隻を持つ見通しだ。ただ、そこには死角も潜む。中国が米軍に比肩する空母部隊を保有しても、そのころには大型空母そのものが時代遅れになっている可能性が出てきたのだ。

米軍は、短い飛行甲板でも離着陸できるステルス戦闘機F35Bの配備を始めている。同機は、離陸にカタパルトを必要としないことや垂直に着陸できるなどの優位点があり、米国から同機を調達できる同盟国であれば、無理をして大型空母を保有する理由がなくなりつつある。また、大型空母は対艦ミサイルや潜水艦の魚雷攻撃の標的になりやすい。今後は複数の小型空母とF35Bのような戦闘機を組み合わせて運用した方が、リスクも建造費も減らせるのだ。

実際、日本の防衛省・自衛隊はその方向で動いている。海上自衛隊は長年、日米共同訓練などを通して空母部隊の運用ノウハウを学んできた。海自最大の護衛艦いずも級(全長248メートル、満載排水量約2万7000トン)は、F35Bを十数機搭載できる。日本が同機を調達し、いずも級などと組み合わせれば、中国空母部隊に対抗可能な、あるいはそれ以上の実力を備えた「日本版空母部隊」を短期間に実現できる。

肝心の戦闘で負けない実力がいつできるかは別にして、中国の空母が、周辺国を威圧する「心理兵器」なのは確かだ。巨額の軍事費は、戦闘機や潜水艦の急激な増強ももたらしている。米国が環太平洋合同演習(リムパック)への中国招待を取り消したり、南シナ海で「航行の自由」作戦を実施しているのも、中国軍の増強ぶりが無視できないからだ。弱点を抱えながらも膨張を続ける中国軍を、過大評価も過小評価もせずに注視し続ける姿勢が求められる。

(編集委員 高坂哲郎)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です