中国、経済支配強める チベット騒乱10年インフラ整備、急 成長の陰で 2018/3/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「中国、経済支配強める チベット騒乱10年インフラ整備、急成長の陰で」です。





 【北京=多部田俊輔、永井央紀】中国のチベット自治区ラサ市で大規模な暴動「チベット騒乱」が発生してから14日で10年が経過する。中国政府は同自治区への手厚いインフラ投資で、域内総生産の成長率を全国2位の10%に引き上げたとアピールする。ただチベット族が経営する地元企業は育たず、政府と共同歩調をとる大手企業の経済支配が強まるばかり。監視の目も厳しく、チベット族は不満を募らせている。

 「3千メートルの高低差を抱える最高難度の工事に取り組む」。四川省成都市とラサを結ぶ1800キロに達する鉄道工事が近く大詰めを迎える。総投資額は2500億元(約4兆2千億円)。鉄道と前後して、高速道路や石油パイプラインも建設する大型プロジェクトだ。

恩恵は漢民族に

 同自治区では交通インフラの整備が進む。ラサと青海省西寧市を結ぶ青蔵鉄道が2006年に開通したのを手始めに、10年間で高速道路は5本開通し、地方空港も2カ所に開港した。17年の固定資産投資は10年前のほぼ10倍の2051億元まで拡大。全国平均の増加率が5倍弱だったのに比べ、著しい伸びだ。

 交通インフラの整備は観光客を同自治区に呼び込んだ。17年の観光客数は2561万人、観光収入は379億元を記録。客数は10年前の約6倍、収入は約8倍と大きな収入源に育った。モバイル決済やシェア自転車などの最新サービスも、北京などに本社を置く大手企業の進出で受けられる。

 インフラ投資をテコに経済は成長したが、「チベット族は豊かになっていない」(ラサに住むチベット族男性)との不満も漏れる。同自治区の都市可処分所得は15年前は全国平均を上回っていたが、現在は8割強の水準まで落ち込む。「観光客が落とす金はチベット族の財布から漢民族の企業に移った」とこぼす。

地元企業育たず

 納税額をもとに算出した同自治区の上位50社をみると、チベット族が経営するのは建設関連の1社だけ。残りは北京市などの大企業の子会社がずらりと並ぶ。いずれも政府の投資拡大に沿って進出した企業だ。観光業も漢民族の企業が多い。

 「税金の減免が狙いの企業も多い」と、税制度に詳しい専門家は指摘する。同自治区の企業所得税の実質税率は9%。全国の25%に比べて低い。半導体大手など多くの大手企業が進出して業績を伸ばしているように一見みえるが、「他地域への再投資などで稼いでいる」との指摘もある。

 中国政府の統計によると、10年の同自治区の漢民族の比率はわずか8%にすぎない。だが、同自治区を指導する共産党指導部の常務委員14人のうち漢民族は約6割の8人を占め、実質的な支配力を強めている。

 同自治区で1歳から育ち「蔵二代(チベットの二代目)」と主張する、トップの呉英傑・同自治区党委書記も漢民族だ。呉氏の父親は党幹部で、妻もチベット駐留軍人の家庭で育ったとされる。

 「焼身自殺は発生していない」。開会中の全国人民代表大会で開かれた同自治区の分科会で、呉氏はこう強調した。チベット騒乱10年に関する質問についても「答える必要はない。我々のチベットの情勢は安定している」と、支配者から見たチベットへの視点が強調されただけだった。



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