中国と世界 わなへの恐怖(1) 「官製革新」の矛盾 2016/02/09 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「中国と世界 わなへの恐怖(1) 「官製革新」の矛盾」です。





 2016年初め、中国経済への不安から世界は再び同時株安に見舞われた。中国は1人あたり国内総生産(GDP)が1万ドル(約117万円)程度に達した時点で成長が急減速する「中所得国のわな」を避けられるか。習近平指導部が進める構造改革を検証する。

中国では産業用ロボットの導入機運が高まっているが…(中堅自動車メーカーの工場、広東省仏山市)

 「200メートル先の家電量販店で5%割引を実施中」。旧正月休みに東京を訪れた中国人観光客のスマートフォンに、こんなメッセージが表れた。

 システムを開発した江蘇省のベンチャー企業、蘇州暢途網絡科技は、世界であまり例のない海外旅行先での無料の自動接続サービスを目指す。起点は「仮想SIMカード」を活用した小型の無線LAN端末だ。

 現在の利用料は従来の半額の1日200円だが、楊玉魁・最高執行責任者は「現地での広告収入で通信料を賄うビジネスモデルを今後2、3年で確立する」と意気込む。

■高まる起業熱

 上海を拠点に中国企業に投資するサイバーエージェント・ベンチャーズの北川伸明・中国代表は「面白い会社が続々と生まれている」と語る。

 中国の調査機関によると、15年にベンチャーキャピタルが中国で投じた資金は前年比25%増の1293億元(約2兆3千億円)になった。米国(約7兆円)には及ばないが、日本の20倍だ。若者の起業熱に、不動産や株の値下がりで行き場を失ったマネーが集まる。

 経済の量から質への転換を図る習指導部も、ベンチャー育成や生産高度化を国策として支援する。地方政府が競うように打ち出す具体策には「ばらまき」色が強まる。

 浙江省杭州市は起業家の住宅購入に100万元を補助し、製造業が集まる広東省は産業用ロボットの導入費用の最大半額を補填する。同省東莞市では申請が昨年末までに700件に達したが、設備を扱う商社の担当者は「補助金目当ての安易な企業も多い」と話す。

 「東芝の家電部門を買えないか」。広東省の電子レンジ世界最大手、格蘭仕(ギャランツ)。昨年末から幹部が海外企業の買収案件探しに奔走し始めた。新たな分野の技術獲得が狙いだ。

 中国企業の売上高に占める研究開発費の比率は1%に満たず、日本の約3%を下回る。ある家電大手幹部は「技術は買う。人を教育している時間はない」と言ってはばからない。イノベーション(技術革新)に不可欠な人材教育や研究開発を軽んじる風潮が漂う。

■淘汰は進まず

 習指導部は減税や規制緩和で民の活力を引き出す「供給側改革」を唱える一方、中期的な国家運営方針を決める13年秋の「3中全会」では「公有制主体の経済を堅持する」と明言した。国有企業の華々しい買収劇の陰で、利益を出せない国有「ゾンビ企業」の淘汰は進んでいない。

 ソニーが「ウォークマン」を発売し、世界に新たなライフスタイルを生み出した1979年、日本の1人あたりGDPは9300ドル弱だった。中国はすでに8千ドルを超え、当時の日本の水準に近づいている。

 国有主体の枠組みを残したまま進む官製イノベーション。世界は固唾をのんで行方を見つめている。

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