中国と世界 わなへの恐怖 2 高齢化大国の予言 2016/02/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「中国と世界 わなへの恐怖 2 高齢化大国の予言」です。





 上海から長江を約80キロメートルさかのぼった地点にある江蘇省南通市。古い平屋建ての家が立ち並ぶ如東県の石板街に若者の姿はなかった。足が不自由な李梅さん(89)の生活を支えるのは70歳の長男。月2千元(約3万5千円)の年金を頼りに一人暮らしを続ける劉芳さん(81)は不安におびえる。「体が動かなくなったら、いったいどうすればいいのか」

■36年前に指摘

 如東県は1980年から本格化した一人っ子政策の優等生だった。妊娠6カ月の妊婦にまで堕胎を強制する徹底ぶりで、86年に「優秀な地域」として国から表彰された。それから30年。60歳以上の人口は全体の約3割と全国平均の約2倍に達し「老いる中国」の先頭をひた走る。

 36年前の「予言」はいまや現実の問題になった。中国人民大学の●滄萍(●は烏におおざと)名誉教授(93)が当時から唱えたとされる「豊かになる前に老いる(未富先老)」という言葉が中国に重くのしかかる。

 働き手はすでに減り始めており、2015年の1年間で487万人減った。60歳以上の人口は35年に現在の約2倍の4億人に達する見通し。ニッセイ基礎研究所によると、中国の国と地方を合わせた社会保障経費は14年に計2兆6千億元を超えた。5年間で約2倍に増え、一般財政支出の2割弱を占める。

■政策修正遅く

 高齢者の急増と未熟な社会保障制度の両面から、医療などにかかる財政負担は今後も増す。36年前の公開書簡は「問題は解決可能」と強調したが、●氏は「これほど問題が深刻になるとは想像できなかった」と明かす。

 人口爆発と食糧難への恐れから「国策」とした一人っ子政策の軌道修正は遅きに失した。習近平指導部は16年、すべての夫婦に第2子まで認める政策に転換したが、生まれてくる子どもが働き手になるまでに20年程度かかる。都市住民の家族観も変わった。

 「2人目を生むべきか」。昨年10月、40歳になる四川省の中学校の同窓生40人が対話アプリ「微信」で深夜まで議論した。結論は「不可能」。中国は共働きが一般的だが「高齢になった両親に2人目の面倒は頼めない」。女性たちの多くは「20年近い仕事のキャリアを今更捨てられない」と書き込んだ。

 新たに2人目の子どもを持てる夫婦は全国で9千万組あるが、その半数は40歳以上だ。世界銀行は「中国の労働力は今後25年間で10%以上、9千万人減る」と予測する。中国は総人口も30年前後に減少に転じ、労働力不足と需要鈍化が成長を制約する。中国政府系のシンクタンクさえ、11~15年に7%台後半だった潜在成長率が16~20年には6%強に下がるとみる。

 少子高齢化と人口減が経済に長い停滞をもたらす恐れは、日本の例が示している。13億人を抱える世界最大の人口大国の老いが、世界経済に与える衝撃は計り知れない。



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