中国と世界 夢追う国の限界(1)「L字」停滞の恐怖 2016/05/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「中国と世界 夢追う国の限界(1)「L字」停滞の恐怖」です。





 「借り入れ条件を見直してほしい」。南米ベネズエラのデルピノ石油鉱業相は3月1日、中国・北京を訪れた。中国の国策銀行、中国国家開発銀行に対して借金の負担軽減を申し入れるためだ。

ベネズエラの苦境に中国は…(右はマドゥロ大統領)=ロイター

 米国の「裏庭」に位置するベネズエラは、2000年代に反米左派へ走った。接近したのは米国と並ぶ大国になることを「夢」とうたう中国だ。

 中国国家開発銀がベネズエラの国営石油会社などに融資し、豊富な埋蔵量を誇る同国の原油で返済する仕組みをつくった。中国経済の高成長と、それに伴う原油需要の急増という「右肩上がり」が筋書きの前提だった。

■狂った目算

 ところが目算が狂う。米国のシェールガス革命に加え、中国の経済成長が鈍化。原油価格は下落し、ベネズエラが05年から受けた累計650億ドル(約7兆円)の融資は「年末までに債務不履行(デフォルト)に陥る可能性が高い」(米大手格付け会社)。

 ベネズエラを含む主要産油国が4月17日に見込んでいた増産凍結の合意も流れ、苦境は続く。それでも中国は同国のSOSに応えられずにいる。

 08年に米国発の金融危機が世界に広がるなか、中国は4兆元(当時の為替レートで50兆円超)の巨額対策で経済を「V字」回復させた。それがいまでは当局者も「今後は『L字』だ」と口をそろえる。景気は失速せず安定に向かうと言いたいようだが、製造業の過剰設備や急速な高齢化などの重みで、長期停滞の「L字」となる恐れが漂う。

 その衝撃は、すでに世界を揺さぶっている。

 8月に五輪開催を控えるにかかわらず、議会でルセフ大統領の弾劾審議が続くブラジル。政治だけでなく、経済も2年連続のマイナス成長に陥りかねない危機にある。

■需要減で失業

 「飲食店の職もない」。資源大手ヴァーレの主力鉱山に近い北部の街の職業紹介所で働くバチスタ氏はこぼす。中国需要を目当てに労働者が流入し、密林に囲まれた街の人口は過去10年余りで3倍近い19万人に増えたが、ヴァーレの中国向け売上高はここ2年で半減。街は失業者であふれた。

 スイス最大労組UNIAは、高級時計の「カルティエ」などを傘下に持つ高級ブランド世界2位のリシュモンの動きに神経をとがらせる。同社は主要な輸出先の中国・香港向けが不振に陥り、「育成に10年はかかる」という熟練工まで含むリストラを検討中だからだ。

 化学最大手の独BASF、鉄鋼首位のアルセロール・ミタル。世界にリスクを分散する巨大企業も中国の需要減で減益傾向が続く。中国の11~15年の平均成長率は7.8%だったが、強気の中国指導部でさえ向こう5年は平均6.5%まで成長が鈍ると覚悟する。

 みずほ総合研究所の試算によると、中国の成長率が1ポイント減速すると、世界経済の成長率は0.24ポイント押し下げられる。世界はまだ中国から吹く逆風の強さに慣れていない。

 「中国の夢」をうたう中国の習近平指導部。世界の大国をめざして突き進むが、巨大化した経済の変調や強気の外交姿勢は世界の火種だ。夢を追う国の限界を追う。

「超高速成長が続くと期待するのは非現実的だ」 楼継偉・財政相



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