中国と世界 夢追う国の限界(2)かすむ元の国際化 2016/05/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「中国と世界 夢追う国の限界(2)かすむ元の国際化」です。





 英国中部の都市、マンチェスター。レンガ造りの古い街並みの一角で、27階建ての高層マンションの建築が進む。成約済みの約7割が中国本土からの投資だ。開発を手掛けるアクシス社の担当は「中国人による投資の勢いは中東やシンガポールをしのぐ」と驚く。

英マンチェスターの中心部では中国人が購入するマンションの建設が相次ぐ

 学生用アパートまで瞬く間に売れる。地元業者は「中国の株式相場が下落した昨年から問い合わせが急増した」という。

 4月の北京。米国、カナダといった先進国から、トルコやフィジーなど新興国の物件まで扱う不動産商談会が開かれた。天津から参加した50歳代の男性は「家族が住んでもいいし、転売してもいい。選択肢は多いに越したことはない」と話す。

 中国マネーが世界を席巻している、というだけではない。背景にあるのは中国からのマネーのエクソダス(大脱出)だ。

■資産目減り

 2015年8月の唐突な人民元の切り下げを機に「元安で資産が目減りする」との恐怖が中国を覆った。中国政府は個人の両替を年5万ドル(500万円強)までに制限するが、他人の名義を借りて規制をかいくぐる例が相次ぐ。15年後半だけで中国からの資本の純流出額は計5500億ドルに上ったとの推計もある。

 市場の「中国売り」に投機筋が拍車をかけた。

 「中国の外貨準備はいずれ尽きる」。米ヘイマン・キャピタルを率いるカイル・バス氏はこう断じ、人民元の空売りを仕掛ける。投資家向け資料は、体に札束を巻き付けて「密輸」する中国人の写真付きだ。著名投資家ジョージ・ソロス氏の盟友、ドラッケンミラー氏の参入も噂される。

 対する中国人民銀行(中央銀行)は2月、「投機筋に市場のムードを主導させない」(周小川総裁)と宣言。大規模な元買い・ドル売り介入に動き、外貨管理も強化した。3月以降、米国の追加利上げ観測が後退してドル安が進むと、元の下落圧力はひとまず緩んだ。

 中国当局の強硬路線は奏功したようにもみえる。

■介入でひずみ

 だが、市場への強引な介入はひずみを生む。

 3月末の香港市場。銀行が人民元を貸し借りする翌日物取引で3.725%の「マイナス金利」が生じた。投機的な取引を抑えようと、人民銀は本土外(オフショア)で流通する元の保有コストを高める規制を導入。銀行は借り手に金利を払ってでも、規制がかかる月末時点の手持ちの元を一時的に減らそうとした。

 企業には「海外送金の手続きに時間がかかるようになった」(日系企業)との不満が広がる。

 習近平指導部は「元の国際化」を目標とし、昨年11月に国際通貨基金(IMF)の仮想通貨・SDR(特別引き出し権)への元の採用にこぎ着けた。だが目立つのは、市場と対話するよりも、力でねじ伏せようとする旧態依然の中国の姿勢だ。

 1つの評価がある。スイフト(国際銀行間通信協会)によると、世界の貿易や投資に使う通貨のうち、元のシェアは3月に1.88%だった。日本円を抜き4位となった昨年8月(2.79%)から後退し、再び5位に沈む。「元の国際化」の看板は早くも色あせている。

「全ての不確実性を拭い去ることはできない」 周小川・中国人民銀総裁



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