中国化進む世界(上) ソフトパワー、無言の圧力 ハリウ ッドもう戻れない 2018/3/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「中国化進む世界(上) ソフトパワー、無言の圧力 ハリウッドもう戻れない」です。





 米ハリウッドで大作映画の制作者が必ず参照する文書がある。中国政府が映画の公開を認めるかどうかを定めたガイドラインだ。映画制作に30年間携わるロバート・ケーン氏は「企画段階から中国の検閲を意識する」と打ち明ける。

■最大の市場へ

サーモンの輸入を制限された後、ノルウェーは中国の人権問題に触れなくなった(17年4月、北京で会談するノルウェーのソルベルグ首相(左)と中国の習近平国家主席)=ロイター

 中国共産党に対する批判はもちろんタブー。過剰な暴力や性的シーンも許さない。1980年代に大ヒットした「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のような時空旅行を扱った作品も「検閲対象となる」(ハリウッド関係者)。過去に戻って共産党党支配を「変えられる」と連想することを警戒しているとされる。

 中国映画市場の規模は遠からず米国を抜いて世界最大となる。米中合作で2016年に公開した「ザ・グレート・ウォール」は米国での興行収入は約50億円だが、中国では4倍の200億円弱を記録した。17年に中国ファンドの出資を受けた制作会社SKグローバルのジョン・ペノッティ社長は「まず中国戦略だ。3年前とは様変わりだ」と語る。

 中国は強固な共産党支配の下で国民の視線を一方向に向けてきた。厳しい統制を武器に経済成長を遂げたいま、自身への同調を求めて世界へ無言の圧力をかける。

 中国の電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」は昨年9月、ノルウェーに拠点を設けた。中国人観光客の急増に対応するためだ。

 ノルウェーのノーベル賞委員会は10年末、中国の民主化運動の象徴である劉暁波氏に平和賞を授与した。中国は反発し、ノルウェー産サーモンの事実上の輸入制限にまで発展した。

 それから7年弱。「中国の利益を大いに重視する」。中国国営メディアは昨年4月、ノルウェー首相、ソルベルグ氏が習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談でこう誓ったと報じた。16年末に関係正常化を果たし、サーモン禁輸も解除された。ソルベルグ氏は劉氏が死去した昨年7月の声明で、中国の人権問題を批判しなかった。

 「中国のソフトパワー(軟実力)の影響力が大幅に高まった」。習氏は昨年10月、3時間超に及ぶ共産党大会の演説で強調した。だが文化などの魅力で信頼を得る力を指すソフトパワーは本来、軍事や経済を背景とする支配力に対抗する概念だ。14億人の市場を武器に異論を封じる習氏の「軟実力」とは重ならない。

■閲覧を遮断も

 それでも世界は中国の顔色をうかがう。各国を代表する出版社などが中国を批判する書籍の出版をためらったり、一部論文の中国からの閲覧を遮断したりしたなどの報道が後を絶たない。

 「事業への影響を恐れ報道機関が中国批判を抑えている。大きな問題だ」。香港の中国返還から10年後の07年、香港紙「蘋果日報(アップルデイリー)」の創業者、黎智英氏は語った。黎氏の懸念をよそに、世界は「中国化(チャイナイゼーション)」の道を自ら選んでいるように映る。



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