事務用ロボ、日本でも普及 単純作業を代替「RPA」、労働時間減 に一役 2018/3/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「事務用ロボ、日本でも普及 単純作業を代替「RPA」、労働時間減に一役」です。





 日本企業のオフィスに自動化の波が押し寄せている。起爆剤はパソコンを使う単純作業を自動化するソフトウエア「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」。工場で起きたような自動化の動きがホワイトカラーに及ぶ。変化に対応するには人間が創造的に働いて仕事の付加価値を高められるような人材教育や法制度の整備が不可欠になる。

 「人間への負担が大きく、面白くなくても、間違ってはいけない仕事がある。RPAはそれを間違いなくこなして人間を助けてくれる」。1年前からRPAを導入している大和ハウス工業の松山竜蔵J―SOX推進室長は言う。決算集計や勤怠管理などの作業を、人手からRPAに置きかえた。単純な作業が少なくなってミスも減り、業務効率が上がっているという。

 RPAは鍵盤を自ら動かし、あらかじめ覚えた曲目を演奏する自動ピアノのようなイメージ。パソコンに組み込むソフトウエアでキーボードやマウスの動きを代替する。定型化した単純な事務作業を担うためロボットと呼ばれる。

 ウェブ上で資料をダウンロードしたり、必要な情報を入力したりするのが基本機能だ。例えば資材の発注では、タイマー設定した時間に取引先の注文サイトでIDやパスワードを入力してログインし、品目と数量を指定してボタンを押してくれる。日本企業のホワイトカラー業務の6割は定型化でき、そのうち8割をRPAで代替できるとされる。

 もともとは米英の専門ソフトメーカーが2000年代初頭に開発した。日本ではNTTデータやアクセンチュア、アビームコンサルティングといったIT(情報技術)企業やコンサル大手が導入サービスを2~3年前から広げている。三井住友フィナンシャルグループは約200業務に取り入れて年間40万時間の作業を削減済み。今後1500人分の業務量にあたる300万時間以上の削減につなげる。

 サントリーホールディングスは今年に入りグループ主要会社のデータ入力など200業務に順次導入し始めた。年間ベースで社員の時間外労働時間の約5%削減をめざす。オリックスグループ、エイチ・アイ・エスなど大手企業が一斉に取り入れ、導入事例の数だけをみると日本が10年の遅れを埋め、既に欧米各国を上回るとみられている。

 国内で急速に浸透した理由は働き方改革が進んでいるためだ。優秀な人材を確保するためにも労働時間の削減が欠かせず、そのツールとしてRPAが経営者の目に留まった。ソフト1つの構築費用が数十万~100万円程度と数億円の専用システムより投資を抑えられることも利用を促している。

 昨年7月にRPA構築サービスを始めたNECは500社から問い合わせがあり数十社が採用した。引き合いは中堅企業に広がっている。

20年、仕事の7%消える?働き手再教育急務

 「RPAにより、人間はいずれ決断をくだすだけになる。1人の業務範囲は3倍になる」。アビームコンサルティングの安部慶喜執行役員は言う。単純作業の時間を削れば、企画や営業など人間の知恵や感性を駆使する領域に人材を配置できるとアピールする。

 国際競争に勝つためにもRPAや人工知能(AI)の活用は欠かせない。日本は高学歴化に伴いホワイトカラー志向が高まっているのに生産性の改善は不十分だ。製造業の雇用は1992年の1400万人が足元で1千万人に減る一方、ホワイトカラーは3千万人弱と就業者の半分を占める。

 日本生産性本部によると、日本の付加価値額(国内総生産)を労働者数で割った労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国中、21位にとどまる。夜遅くまで働いても1人が生み出す価値額は欧米に及ばない。OECDは日本の労働力人口の7%が携わる仕事が20年までに自動化により消え、さらに22%の仕事の内容が大幅に変わると予測している。

 日本の一般事務職は18年1月の有効求人倍率(パートを含む)が0.41倍と供給過多が顕著だが、開発技術者では2.38倍に達している。情報処理・通信技術者は2.63倍だ。こうした分野に集中的に人材を配置するため、職業訓練や人材教育で政府の後押しも必要になる。

 今はあらゆる産業で人手が不足し、機械に仕事が奪われる事態は表面化していない。決められた仕事をこなして時間単位で給与を受け取る働き方を快適と感じる人も多い。しかし、景気が後退して雇用が悪化する局面を迎えれば、求人は付加価値の高い仕事に集中するようになる。

 RPAやAIが浸透する今後、成果に応じて賃金を決める「脱時間給」のような制度は欠かせなくなる。ただ多様な働き方を促す裁量労働制の拡大は今国会に提出する働き方改革関連法案から除外された。与野党の攻防よりも、ホワイトカラーの生産性向上を促す議論が求められている。

(中島募、宮住達朗)



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