人口減地方が映す近未来(上)埋もれた資産、活用探る土地の2割、所有 者不明 2017/8/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「人口減地方が映す近未来(上)埋もれた資産、活用探る土地の2割、所有者不明」です。





 日本の人口減少が一段と深刻になっている。1年間に生まれてくる子どもが100万人を割り込む一方、死亡者は130万人に迫る。減少が顕著な地方は近未来の縮図である。そこから人口減時代の新常態(ニューノーマル)を探る。

所有者不明の不動産は都市部でも問題化している(神戸市中央区)

市が工事費負担

 人口6番目の政令市、神戸市の中心、三ノ宮駅から約1.5キロ。事務所やアパートが並ぶ一角に老朽化した3階建ての建物がある。「外壁が崩れて危ない」。近隣から通報が寄せられたが、最後に登記されたのは40年以上前。登記された人は死亡していた。市がネットを張るなどの緊急工事を実施したが、約90万円の費用は「持ち主が分からないので市が負担するしかない」(住宅都市局の金本忠義担当部長)。

 総務省によると、1月時点の日本人の総人口は約1億2558万人。5年間で約107万人(0.9%)減少した。多死社会のなか、管理の手間などから親族が死んでも相続登記されない不動産が多い。かつて土地は価値の源泉だったが、人口減が本格化するなか、放置されたままの資産が随所に出現している。増田寛也元総務相が座長を務める研究会は6月、「全国の土地の2割で所有者が不明」との推計をまとめている。

 地方の人口減は全国の先を行く。秋田、青森などでは5年間の減少率が4%を超える。それだけに状況も深刻で、熊本県人吉市では、市内の墓の約4割が引き継ぐ人のいない「無縁墓」という調査結果もある。

 ただ神戸の例でもわかるように不動産の放置は都市部でも顕在化している。典型が空き家だ。東京都足立区が15年度に実施した調査では、区内の約2350棟が空き家状態という。空き家は街並みだけでなく防災上の問題も抱える。区は登記された人の親族と連絡をとるなど所有者を探し出し、利活用を探る。モデル地区では、住民や有識者の意見を参考にカフェへの転換など具体的な方法の提案も検討する。

農家に貸し付け

 問題は探しても持ち主がわからない不動産だ。増田氏は「所有者不明の場合、所有者の同意がなくても貸し借りできる制度が必要」と主張する。

 ヒントは静岡県東伊豆町にある。ここに約900平方メートルの遊休農地があった。登記簿上の所有者は約70年前に死亡。親族も亡くなり、現在の所有者が特定できない。13年の農地法改正で、知事が裁定を下せば、所有者不明の土地を農地中間管理機構(農地バンク)を通じて貸せるようになった。町はこの制度を活用。4月、隣の農家に5年間で約1万1000円で貸し付けた。

 農地法の規定は農地に限られる。宅地や商業地で同様な制度を導入するには不動産制度の抜本改革が必要になる。「財産権の根幹を変えることになりかねず、強い抵抗が予想される」(増田氏)

 国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位)では40年の死亡者は約168万人にのぼる。人口減が常態化し、パラダイムシフトが不可欠ななか、抵抗の強い改革こそ必要かもしれない。



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