人材開国(上) 政策転換 問われる覚悟 2018/07/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「人材開国(上) 政策転換 問われる覚悟」です。





政府は24日、外国人労働者の受け入れ拡大を検討する関係閣僚会議を発足させた。単純労働を含めて幅広く外国人材に国を開く歴史的な政策転換だ。2019年4月の実施まで半年余り。日本の経済、社会を大きく変える挑戦が始まる。

(画像:台湾の台北駅はインドネシアの労働者でごった返す)

6月22日昼、麻生太郎財務相は自民党本部に姿を見せた。普段は党本部に立ち寄ることが少ない麻生氏が出席したのは鋳物製造業者の団体、日本鋳造協会との会合。団体側は「人手不足で労務費が高騰している」として、外国人労働者の受け入れを強く求めた。

きっかけは1週間前の6月15日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の閣議決定だ。政府は技能実習生らに限ってきた単純労働で初めて外国人の就労を認めた。「対象業種を建設、農業など5分野に限定する」との方針が伝わると、他の業界は慌てて政府や与党への陳情に走った。

22日の鋳造協会との会合では、経済産業省の官僚が「製造業すべてを最初から対象にするのは難しい。鋳造業の必要性を説明していく」となだめた。製造業は機械、鉄鋼などの需要が内外で旺盛だが、それに応える働き手が足りない。

「参院選に響く」

首相官邸も現場の切迫ぶりを感じた。安倍晋三首相の側近は「5業種だけでなく広く製造業にも認めないと持ちません」と首相に直訴。「人手不足対策を打たないと参院選に響きます」と伝えた。人手不足は賃金面で競争力が弱い地方や中小の企業ほど目立つ。来年は春に統一地方選、夏に参院選があり、企業のつなぎ留めが欠かせない。建設業は約330万人の作業員の24.5%が60歳以上と大量退職時代が間近だ。政権の成長戦略が手薄だと受け止められれば、選挙でしっぺ返しを受けかねない。

首相は踏み込んだ。6月27日の党首討論では「移民政策」の定義を問われ「一定程度の規模の外国人およびその家族を期限を設けることなく受け入れる政策はとらない」と答えた。裏返せば、大規模ではなく期限を設けて開国する宣言だ。

保守層を支持基盤とする首相。治安悪化などを理由に保守層には外国人受け入れに慎重論が多いとされ、首相も「移民政策はとらない」と繰り返してきた。だが新たな宣言で移民の定義を狭めたことで、外国人労働者をさらに増やせる。法務省幹部は「経済的なニーズを満たす政策を正面から実現できる」と話す。

拙速さ自戒も

では外国人と共生する覚悟は十分といえるのか。

台湾の台北駅。毎週日曜になると、ヒジャブ(スカーフ)をまとったインドネシア人女性らの憩いの場としてロビーはにぎわう。「台湾の人は親切で不満はない」。住み込みで高齢者を介護するジャワ島出身のユリアさん(30)は笑う。

台湾は90年代から外国人労働者を介護分野などで積極的に受け入れている。すでに外国人は総人口の3%を占め、2%弱の日本を上回る。台湾当局は外国人労働者の待遇改善を進めてきたが、それでも過酷な長時間労働や虐待といったトラブルは消えない。

英国では移民への不満が欧州連合(EU)離脱を決める要因となった。「景気が悪化して仕事がなくなったからといって、すぐに母国に帰ってくれとは言えない」(ゼネコン首脳)。人手不足に悩む企業にも拙速を自戒する声は残る。議論を尽くすときを迎えた。

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