人材開国(中) 多様性生かす知恵求む 2018/07/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「人材開国(中) 多様性生かす知恵求む」です。





気がつけば、日本で働く外国人が増えた。群馬県沼田市。建設業の教育訓練施設「利根沼田テクノアカデミー」で学ぶ20人超のうち、半分は外国人だ。3月に来日したインドネシア人のファイサルさん(22)は「日本の職人の真剣さに引かれた」と語る。深刻な人手不足を受け、外国人労働者は2017年で127万人と5年でほぼ倍増した。

(画像:外国人技能実習生らが建設の基礎技術を学ぶ(群馬県沼田市))

企業は知恵を絞る。18年度の新卒社員の14%が外国籍だったコニカミノルタは1月、30歳代前半のウズベキスタン人社員を外国籍として初の管理職に抜てきした。「日本企業は出世が遅い」。外国人社員の声を聞き、評価基準を改めた。

母国の方が高給

門戸を開くだけで日本が選ばれる時代ではない。フィリピン人介護士の月給は米国やカナダが約27万5千円(1ドル=110円換算)、シンガポールが約16万5千円。17万~20万円の日本に優位性は乏しい。建設業の中国人技能実習生は16年時点で2300人。12年から約1千人減った。母国で働いた方が稼げるからだ。

政府は外国人材の受け入れ拡大へカジを切るが、目立つのはちぐはぐな政策だ。都内の大学に留学していた中国人の張雪さん(仮名)はアルバイト先の飲食チェーンへの就職を望んだが、就労ビザが取れず断念。日本を理解する「金の卵」をみすみす逃している。

親とともに来日した外国人の子弟も似た境遇にある。NPO法人みんなのおうち(東京・新宿)は外国人の小中学生に勉強を教える。多くの子が都立高校に進学するが「高卒の教え子の6割は正社員として働けていない」(小林普子代表理事)。中学3年までに来日した高卒の外国人の就労を認める見直しが実現したのは、今年2月のことだ。

向井建設(東京・千代田)で作業員として働くベトナム人のグエン・タン・クインさん(31)は、現場で若い日本人作業員に指示するほど技能が高い。初めて来日したのは12年。過去に技能実習を終えた外国人が対象の「建設就労者受入事業」で16年に再来日したが、現行制度ではあと約1年半しか日本で働けない。

「移民政策でない」

選ばれる知恵と、受け入れる覚悟。日本はそのいずれもまだ不十分だ。

都内の大学病院の職員は「医療現場で外国人と意思疎通できる人材が足りない」と危機感を強める。外国人を受け入れる社会インフラはまだ十分ではない。一方で、受け入れた後に社会との摩擦を生みそうな問題はすでに芽生えている。

NTT東日本関東病院の海老原功・外国人向け医療コーディネーターが以前の勤務先での体験を話してくれた。60歳代の中国人男性が来日し、100万円超の心臓病の治療を受けた。日本で働く息子の扶養扱いで全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険証を使い、約10万円の自己負担分だけ払い帰国した。日本の公的医療保険では「被保険者に養われる親」は海外在住でも保険給付の対象となる。

米国では成人の親戚まで呼び寄せる「連鎖移民」が社会問題となっている。安倍政権は外国人材の受け入れ拡大を「移民政策ではない」というが、ほしい人材だけ受け入れようといういいとこ取りの議論で終わらないか。一橋大の森千香子准教授は「事実上の移民政策として議論すべきだ」と説く。外国人を対等な立場で受け入れ、社会の多様性を生かす知恵が問われる。

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