人民元安 綱渡りの中国(下)国際化の夢なお遠く 投機的取引の規制近づく 2016/04/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「人民元安 綱渡りの中国(下)国際化の夢なお遠く 投機的取引の規制近づく」です。





 「日本円は金融緩和により、対ドルで約3割下落した。人民元がわずか数%下げただけで先進国が問題視するのは不公平ではないか」。上海社会科学院の王戦院長は3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)期間中に日本経済新聞のインタビューにこう答えた。王氏は2014年、元世界銀行チーフエコノミストの林毅夫氏らと習近平総書記主催の座談会で習氏に中国経済のアドバイスをした業界の重鎮だ。

 人民元は15年8月まで事実上のドルペッグ(連動)制度を採用。米ドルの上昇に伴い、人民元も連れ高した。元の実効為替レート(貿易相手国ごとの為替相場と取引量を勘案した相場)は、リーマン・ショック後に固定していた為替レートを弾力化した10年6月と比べ約3割も上昇した。

 元高で中国企業は競争力が低下。「(過去の元高で)輸入石炭が下落し、国内炭価格に悪影響を与えてきた」(安徽省の国有採炭会社、淮南砿業の孔祥喜董事長)などの不満が出ていた。

 一方、李克強首相は「中国は通貨安競争に参加しない」と断言し、「人民元は合理的な均衡水準で基本的な安定を保つ」と繰り返す。ただ李首相の「基本的な安定」は、あくまでも複数の通貨で構成する通貨バスケットを想定。従来のように対ドルでの安定を志向しているわけではない。

 問題は中国政府がこうした意図を明確にしてこなかったことだ。中国人民銀行(中央銀行)傘下の中国外貨取引センターは15年12月、ドルやユーロなど複数通貨に対する人民元の変動を示す指数を公表し始めた。だが人民銀は通貨バスケットへの連動を明言せず、これが市場の不信感とドル買いによる資本流出を同時に招いた。14年末を100とする通貨バスケット指数は3月31日時点で98.14とやや元安傾向だ。

 「中国経済のハードランディングは不可避」。1月、著名投資家のジョージ・ソロス氏が“中国売り”を唱えると、中国は「中国経済は絶対にハードランディングしない」(人民日報)などと猛烈に反発。王氏もソロス氏など「投機家に対して政府は何らかの措置を講ずべきだ」と批判する。

 「(投機的な金融取引に課す)トービン税を短期資本に対し課すかどうか研究しなければならない」。国家外貨管理局の王允貴総合司長は3月22日の会見で言及した。導入すればソロス氏のような投機的取引の抑制につながるとの考えだ。

 中国銀行の元行長(頭取)、李礼輝氏も「投機筋による異常な資本流出が起きた際に資本規制を課すのは多くの国で行われている」と容認する。

 中国は1月、株式市場でサーキットブレーカー(相場の急変時に取引を強制終了する仕組み)制度を導入したが、わずか4日で撤回に追い込まれた。市場変動を過度に恐れる中国は力ずくで対処しがちだが思惑通りにいくとは限らない。

 中国共産党は人民元の国際化に「中国の夢」を託す。経済規模を生かし最終的にはドルを超える基軸通貨にするのが国家目標だ。昨年の国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨入りはその一歩。だが国際通貨は国境を越えた自由な交換が前提条件となる。トービン税のような資本規制を課せば、人民元の国際通貨への道はさらに遠のくことになる。

 土居倫之が担当しました。



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