企業統治、株主目線で磨く 指針導入1年 2016/05/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合2面にある「企業統治、株主目線で磨く 指針導入1年」です。





 企業統治指針の導入から約1年が経過し、企業側の体制整備が加速してきた。株主の目線で経営に参加する社外取締役は6000人を突破し、社内も含めた取締役全体の約2割に達する。持ち合い株式を売却したり、買収防衛策を取りやめたりする企業も増えている。こうした体制面の改善が進むなか、実際に企業統治を強化するための運用の巧拙が一段と重要になってきている。

■社外取締役6000人超す 全体の2割、監視強化

 2015年6月に導入された企業統治指針は「経営の監督役」として独立性の高い社外取締役の複数選任を求めている。持ち合い株の保有や買収防衛策を続けるには「合理的な理由」を説明しなければならない。

 東証のデータによると24日時点で上場企業の社外取締役は延べ約6200人。15年7月から約700人増えた。社内も含めると取締役は同2万8000人で、社外取締役は全体の2割を占める。

 東証1部上場の2、3月期決算企業のうち現時点で社外取締役がゼロなのは37社にとどまる。このうち警備大手のCSPやクリナップなど29社は今年の株主総会に社外取締役の採用議案を諮る予定で、社外取締役はさらに増えるのが確実だ。

 ただ、社外監査役を社外取締役に横滑りさせたり、大口取引先などから社外取締役を招くなど形式面だけを整えるようなケースも見受けられる。この背景には社外取締役の役割をきちんと担える「経営のプロ」が少ないという事情もある。

 こうしたなかで企業統治の強化につなげていくには、会社側が事業の実態や課題について社外取締役にていねいに説明する一方、社外取締役も十分に準備をして取締役会に臨むといった工夫が必要になる。企業統治の体制整備が進むにつれて、「経営判断を下すまでに社外取締役と緊密な議論を重ねているかどうかなど運用の中身が重要になっている」(大和総研の横山淳氏)。

■持ち合い株売却 資金を有効活用

 16年3月期に上場企業が計上した有価証券売却益は合計1兆2000億円超と、9年ぶりの高水準に膨らんだ。持ち合い株などの売却が進んだためだ。

 NTTデータは取引を円滑にする目的で保有してきたリクルートホールディングス株などを売却し、16年3月期に152億円の売却益を計上した。大日本印刷も保有株の売却を進めた。「資本効率を高める」のが狙いで、今後も段階的に売却を続ける方針だ。

 王子ホールディングスも前期に持ち合い株を中心に手放して161億円の売却益を計上した。中国工場の資産価値を見直して566億円の減損損失を計上したが、保有株の売却益で財務悪化には一定の歯止めをかけることができた。

 株式の持ち合いは徐々に減ってきてはいるものの、企業間だけでもまだ20兆円規模残っているという。取引関係の維持などのメリットがあるとされる半面、持ち合い関係にある企業同士は互いに相手の経営には口を出さないのが普通なので企業統治の空洞化を招くとの批判が根強い。

 保有株の売却は資金の有効活用にもつながる。売却代金をM&A(合併・買収)や海外展開など攻めの投資の原資に充てられるほか、配当や自社株買いなど株主配分の強化につなげるといった使途がある。

■買収防衛策を廃止 経営に規律

 敵対的買収を阻止する狙いの「買収防衛策」を取りやめる企業も増えている。27社が16年に入って買収防衛策の廃止を発表した。昨年1年間の24社をすでに上回り、6年ぶりの高水準だ。

 買収防衛策では大量の株を取得する企業や投資家が現れた場合に、他の親密な株主に新株予約権を与えるといった手法で買収を妨害することが多い。

 ニチレイは今年の株主総会にこれまで続けてきた買収防衛策の廃止案を諮る。買収を仕掛けてきた相手であっても、「株主の意見は対話を通じて経営戦略に反映すべきだ」と判断した。

 古河電気工業も同様に買収防衛策の廃止案を総会に提出する。「社外取締役からも買収防衛策の廃止を求められていた」という。「企業は買収防衛策と株主価値の関係をはっきり説明しなければならなくなっている」と野村証券の西山賢吾氏は指摘する。

 2000年代に米スティール・パートナーズなど「物言う株主」が台頭し、企業と対決する姿勢を強めた結果、買収防衛策の導入が相次いだ。だが、買収防衛策があると業績や株価が低迷したままでも買収のリスクにさらされないため、「経営の規律がゆるむ」との批判が外国人投資家などから根強くある。



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